【婚姻届に判を捺しただけですが 5話】百瀬の不毛な恋の行方・ネタバレあり
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Twitterやブログでドラマの感想をつづり人気を博している、あずきごはん(@komadorama)さんによる、新連載。
TBSで始まった2021年秋の新ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』の見どころを、あずきごはんさん独自の視点でご紹介します。
偽装結婚という隠れ蓑を用意してまで、兄嫁である美晴(倉科カナ)への恋を大切にしていた百瀬(坂口健太郎)。第5話ではそんな百瀬の恋に1つの区切りがついた。
『婚姻届に判を捺しただけですが』第5話を振り返る
美晴(倉科カナ)が離婚届を置いて家を出た。
美晴を必死で探す百瀬(坂口健太郎)と旭(前野朋哉)。明葉(清野菜名)はそれを見ていることしかできない。そんな中、百瀬は不動産会社の前で美晴と遭遇する。
「旭と離婚して1人で生きていくつもり」と言う美晴に対して、百瀬は「しばらく家にいればいい」と提案したのだった。
美晴は彼女の気持ちばかりを気にして、自分がどうしたいのかを言ってくれない旭に不満を感じていた。
美晴の両親は不満を隠してうわべだけの会話を続けているうちに離婚した。彼女はそれを反面教師にして、向き合っていける夫婦を理想としていたのだ。
しかし、美晴は向き合いたいと言いつつも別れの告げ方が一方的だ。
彼女自身も『向き合う』ということの本質が理解できておらず、理想と現実の狭間で苦しんでいたのではないだろうか。
そんな美晴を『夫の弟』である自分の家で預かり、離婚の決断を先延ばしにした百瀬。その判断は兄夫婦にとって最善のものだが、百瀬自身と明葉にとっては茨の道であることは容易に想像できる。
美晴に怪しまれないようにと百瀬の部屋で一緒に寝ることになった2人。兄と結婚してから美晴は幸せではなかったのか。百瀬は揺れる感情を明葉に打ち明ける。
「原因がわかれば関係を修復できるかも」「何か聞いてたら教えてくれないか?」と必死な旭に対して、何も聞いてないと答える百瀬。
美晴のために嘘をついたのか、自分の感情を優先させてしまったのか。
いずれにせよ「美晴の幸せのために自分の想いは隠し続ける」という百瀬の信念はブレ始めていた。
牧原(高杉真宙)は「好きの形が変わるのにスイッチが入るのは一瞬だからね」なんて冗談めかしていたが、固い信念を持って自分を律していた人ほど、それが崩れた時の戸惑いや迷いは大きいのかもしれない。
一方、美晴は「旭くんへの気持ちが分からなくなった」「もう一緒に暮らせない」の一点張り。
「気持ちが迷子になってるだけだと思う」と言う百瀬にも「あったものを失くすのと元々ないのとは全然違うから」と返す。
旭も「美晴にはいつも笑っててほしいんだ」「それが俺の隣じゃなくても」と諦めモードに入り始める。
美晴の幸せのために手を離そうとする旭に「苦しくないの?それでいいの?」と聞く百瀬。自分以外の隣で笑う美晴を見て苦しんだのはきっと百瀬自身だ。
今後の見どころが増えた第5話
これまで百瀬の美晴に対する感情は『信仰』に近いものだと解釈していた。
その理由の1つは百瀬から恋愛特有のドロドロとした感情や欲をあまり感じなかったことだ。
しかし、「兄が美晴を幸せにできないなら僕が」と本音をこぼす百瀬からは、それらの片鱗が見えた気がする。
その感情を美晴にぶつけることはせず、むしろ恋敵であるはずの兄の背中を押してしまう。それが百瀬の恋愛における弱さであり、人間的な魅力でもある。
その後、旭が火事に巻き込まれたことをきっかけに兄夫婦が再会。美晴は旭の存在の大きさと旭の好きなところを改めて実感する。
お互いに気持ちを伝え合い、「今度は向き合っていこう」と決意を新たにする2人。
お互いに自分の気持ちをまっすぐぶつけて向き合える関係性は確かに理想的だ。
しかし愛情があるからこそ言えないことや直視できないものもあるし、発した言葉によって関係が修復できなくなる可能性もある。
今回の騒動で兄夫婦がどのように変化するのか。今後のドラマの見どころが1つ増えたように感じる。
百瀬の不毛な恋の行方は…
そして百瀬の不毛な恋に決着はついたのか。その答えは今後の展開と視聴者の解釈に委ねられたのではないだろうか。
ドラマの終盤、「本当に好きな相手は百瀬だったのか」という旨を尋ねる明葉に対して、美晴は「何事も白黒つけようとしちゃダメよ?」と返した。
そして百瀬は「これからも遠くで美晴を見守る」と話している。
これらのやり取りは「美晴と百瀬が恋愛的な意味で交わる可能性は限りなく低い」ということを暗示しているように思える。
義理の弟の妻からの不穏な質問に思わせぶりな返しをする美晴は、『ひまわり』という百瀬の例えからはズレている。
「理想の家族」発言にショックを受けた時から気づいてはいたが、やはり百瀬は美晴の本質を多面的に捉えることができていない。恋は盲目。信仰は理解と遠い所にあるから仕方がない。
しかし、美晴が理想とする『向き合っていける夫婦』を成立させるためには、百瀬を相手として選ぶわけにはいかない。
自分を神聖視している人間と向き合うことは、本来の自分と相手が思う自分とのギャップに苦しめられることに繋がる。
美晴が百瀬に恋心を抱いていたのかどうかは分からないが、美晴と百瀬が結婚したとしても『理想の家族』を作るのは難しい。
そして百瀬には、美晴を不幸にするリスクを冒してまで彼女と一緒にいようという意志はない。
兄夫婦の関係が修復された中、百瀬が美晴と恋愛関係になるために行動を起こすというのは考えづらい。
そんな中で百瀬の感情は明葉へと向かうのか、それとも不毛な恋を抱えたまま終わるのか、はたまた別の誰かと恋に落ちるのか…。
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婚姻届に判を捺しただけですが/TBS系で毎週火曜・夜10時~放送
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[文・構成/grape編集部]