【『VIVANT』感想初回】堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、鮮やかな個性が渦巻く冒険の始まり
公開: 更新:
快挙を成し遂げた狩野英孝、帰国便の搭乗券をよく見ると… 「さすがJAL」の声ホノルルマラソンから帰国する狩野英孝さんに、JALが用意したサプライズとは…。
ロケで出会う人を「お母さん」と呼ぶのは気になる ウイカが決めている呼び方とは?タレントがロケで街中の人を呼ぶ時の「お母さん」「お父さん」に違和感…。ファーストサマーウイカさんが実践している呼び方とは。
grape [グレイプ] entertainment
Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年7月スタートのテレビドラマ『VIVANT』(TBS系)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
『映画みたいな~』は、これまでにもいくつかの日本のドラマにも存在していたけれども、これは『みたい』じゃなくて、もう映画だと見終えてからちょっと放心していた。
そして『映画のような』の、映画らしさって何だろうなと考え込んだ。
ロケによる映像の生々しさ、ふんだんにかけられた予算をうかがわせるアクション、完結まで観客が見ることを前提にした堅固かつ信頼感溢れるストーリー。
どれだろうな、いやどれもだなと感嘆のため息が出た。
『VIVANT(ヴィヴァン)』(TBS系 日曜21時)。
今作はタイトルと出演俳優と、そしてモンゴルでロケーションが行われているということ以外は殆ど何も事前に明かされないままに始まった。
主演級の俳優がずらりと名を連ねる配役の豪華さと、そしてTBSドラマの看板・日曜劇場で数々のヒット作を生んだ福澤克雄が手がけているということから、ただならぬ作品だということは予想がつく。
実際に始まった拡大版90分の初回は我々の『凄いらしい』の予想を一気にぶち抜いてきた。
物語は灼熱の砂漠を彷徨う日本人のサラリーマンから始まる。その男は乃木憂助、演じるのは堺雅人である。人の名前に『憂』の字は珍しく感じられる。
『憂』は言わずもがな思い悩む様であるけれども、『憂』の下の部分『夊(すい)』はゆっくり歩く様子という意味があり、彼が砂漠をよろよろと歩く姿が象徴的に見えてくる。
乃木がその状況に追い込まれた原因は一桁間違った誤送金である。
一桁間違いの送金とは、ある意味どこで起きてもおかしくないような、事務職の悪夢の一つではあるけれども、乃木が被ったのは大手商社の13億と130億の間違いという途方もない額だった。
堺雅人とバンキングとなればついついあの名作ドラマ『半沢直樹』(TBS系)を思い出すが、乃木には半沢直樹の盟友・渡真利忍は見当たらず、同期として登場する山本巧(迫田孝也)は、圧は強めだが敵なのか味方なのかは分からない。
乃木は中央アジアのバルカという国(この国名は架空のものである)に振り込まれた金の返金交渉に一人で訪れるが、返金交渉は難航した上に、ようやく見つけた交渉相手は返金どころか周囲を巻き込んだ自爆で死んでしまう。
すんでのところで乃木を救い出したのは、野崎と名乗る公安部外事4課の刑事だった。
野崎を演じるのは阿部寛。2015年・2018年放送のテレビドラマ『下町ロケット』(TBS系)、2005年・2021年放送の『ドラゴン桜』(TBS系)と、阿部もまた日曜劇場を代表する俳優である。
大胆にして用意周到、どんな危機にも飄々と対処するダンディズム溢れる野崎は、阿部寛にしか出せない圧倒的な存在感である。
かくして爆弾犯と見なされて現地の警察から追われることになった乃木と野崎は、バルカで医師として働く柚木薫(二階堂ふみ)まで巻き込んで、日本大使館まで怒濤の逃走劇を繰り広げることになる。
ダーティで一見救いのない逃走劇だが、もはや懲戒免職どころか生きぬくことも難しそうなのに、出会う相手に律儀に名刺を渡し、お金を返して下さいと切々と訴える乃木の社畜ぶりが可笑しくて魅力的だ。なるほど、これも堺雅人にしか出来ない。
二階堂ふみ演じる医師の薫はタフで自立したメンタルの持ち主である。
二階堂ふみのインテリで気丈な女は、やはりハマり役だ。
監督の福澤は、番組開始前のインタビューでドラマの内容は明かさないまでも、自身がスター・ウォーズシリーズの大ファンだと語っている。
なるほど無垢で頭でっかちの主人公と、無頼でダンディな男と無頼な男の頼れる相棒(野崎にはドラムという有能な男がサポートについている)、そして気丈で高潔な魂の女。
面白くならないわけがない、まさに黄金比である。
今回、冒頭の砂漠から大使館前の白熱のゴールラインまで、時間も週明けの仕事の予定も吹っ飛んだように見ていた。
羊たちとともに疾走する馬に、瞬きを忘れた。
ラスト、乃木の体を大使館の一線を挟んで引っ張り合うシーンではその無茶苦茶さに笑いながら手に汗を握った。
子供の頃にわくわくしながら見ていた香港アクション映画のようだと思った。
それは今や当たり前になった、どんなエンタテインメント作品か事前に情報を入れて、自分の予想と答え合わせしながら見ている視聴体験とはまったく違う、鮮烈で素晴らしいものだった。
知らされていないという楽しさを、このドラマでは存分に味わいつくしたい。
そして、とにかく画面から溢れてくる熱と勢いが凄まじいから、こちらも気合いを入れて画面の前に座ろうと思う。
ぜひ皆さんもご一緒に。『VIVANT』で空前絶後の冒険を!
この記事の画像(全10枚)
ドラマコラムの一覧はこちら
[文・構成/grape編集部]
かな
Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。
⇒ かなさんのコラムはこちら