日本語には雨を表す言葉が400以上 言葉ひとつ知ることによって、この世界を感じる幅が大きく広がる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
雨の日、雨の言葉を思う
雨の季節になりました。この数十年で雨の降り方が変わりました。しとしととしめやかに降るのではなく、強い風を伴った激しい雨が多くなりました。
『ゲリラ豪雨』という言葉が頻繁に聞かれるようになったのは、2007年か2008年頃でしょうか。にわかに風が強くなり、積乱雲が発達し集中豪雨に。1時間に100mmを超える雨量を処理しきれずに都市型洪水を起こす。
我が家も2回、ガレージから入った雨が配電盤の高さを超え、排水装置が止まったために浴室洗面所に浸水しました。その片付けの大変さと言ったら……。大雨のたびに、ヒヤヒヤします。
日本語には雨を表す言葉が400以上あると言われています。また空、雲、風、雪の名前も数多くあります。四季があり、季節の変化が大きい日本には、気象を表す言葉が多くあります。
また農耕をする上でも、季節、気象の変化は重要なポイントとなったのでしょう。その名前の多くは趣のあるもので、いかにいにしえの日本人が自然に対して畏敬の念を持ち、親しみ、深い関わりを持ってきたかということがそれらの言葉からわかります。
この季節の、こんなタイミングの、こんなふうに降る雨……というふうに付けられた雨の名前は、とても味わい深いものです。いにしえの人たちの感性の豊かさを感じます。
春から夏にかけて降る雨の名前のほんの一部、花雨、春時雨、桃花雨、卯の花腐し、青梅雨、虎が雨、五月雨、走梅雨、暴れ梅雨、小糠雨、白雨、夕立など。
神立は東日本で神様が何かを伝える雷雨、夕立、にわか雨を言うそうです。雨の名前を知って、雨の日の趣を味わえるようになりました。
以前、レコーディングでハワイに2ヶ月ほど滞在しました。ハワイ語のアルバム・タイトルをつけるために、辞書を読み込んで気づいたことがあります。
ハワイ語にも気象を表す言葉が多く、それに加えて海に関する言葉が実に細かく数多くあるのです。農耕を中心に生きてきた日本人、海が生活の礎だったハワイの人々は、気象について繊細な感受性を持っていたのでしょう。
自然を表す言葉と人間の結びつきは、森羅万象に生かされていること、そして自然に心を響かせながら過ごす豊かさを教えてくれます。
知っている言葉よりも、知らない言葉の方がはるかに多い。言葉ひとつ知ることによって、この世界を感じる幅が大きく広がります。
雨の朝、その名前をふと思い出す。忙しい日常の中のそんな小さな瞬間は、ささやかな、でも豊かな気持ちにさせてくれるでしょう。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」