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ずっと忘れられない「大丈夫」の言葉 出産の際、聞こえてきたのは…

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

忘れられない「大丈夫」

忘れられない「大丈夫」があります。22年前、娘を出産したときのこと。陣痛がまだそれほど強くなかったときに破水、それから急激に陣痛がきて緊急帝王切開になりました。大きな子宮筋腫があるために、元々帝王切開の可能性を言われていたのでそれ自体は驚かなかったのですが、緊急ということで周りが急に慌ただしくなったのです。

妹たちと夫がそばについていてくれました。母は帯状疱疹が回復して間もない頃だったので病室に入ることができず、一晩中ずっと暗い廊下のベンチで待機していました。私はストレッチャーに乗せられ、病室を出てエレベーターホールに向かうとき、母の声が聞こえたのです。

「由美ちゃん、大丈夫よ!」

「大丈夫」という言葉は、魔法の言葉のようです。魔法の言葉というよりも、エネルギーそのもの言ったほうがいいでしょうか。魔法はいつか解けてしまいますから。あのときの母の「大丈夫よ!」という言葉は、それから幾度となく私を支えてくれました。3年前に母が亡くなってから、「大丈夫よ」という言葉の持つ確かな重みを感じるようになりました。

「大丈夫」という言葉には、深い信頼と愛がこもっているのだと思います。深い信頼を感じさせるために、「大丈夫」と口にすることもあります。例えば、不安なとき、自信を失ったとき、私は心の中で(大丈夫、大丈夫、私は大丈夫)と唱えるように何度も自分に言い聞かせます。すると、ぐらついていた心が落ち着くのです。

改めて思い出してみると、私も娘にいつも「大丈夫」という言葉をかけてきました。ピンチに陥ったときほど、「大丈夫、あなたなら大丈夫」と声をかけているのです。意識して言おうというよりも、ふっと心の奥からこぼれるように出てくる。特に娘がアメリカの高校に通い、大学に進学し、何かあってもすぐにサポートできない状況になってからというもの、この言葉の重みをずしりと感じるのです。

「大丈夫」が「大丈夫」であるためには、そのための「何か」が必要です。それはやり抜く力かもしれないし、忍耐力かもしれない。そう声をかけたからには、こちらにも責任があるのです。だからと言って、代わりを果たすことはできない。ですから、軽はずみには言える言葉でもないと思うのです。

「大丈夫」という言葉を支える深い信頼と愛をどう育めばいいのか。それは、無条件であること、ただただ愛すること、人生を愛することなのではないかと思います。病院の暗い廊下で聞いたあの母の言葉を通して、ただただ愛することを今も学んでいるのです。

※記事中の写真はすべてイメージ

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[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
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吉元由美Facebookページ
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