恋愛でも兄妹でもバディでもない関係性 『クジャクのダンス、誰が見た?』7話
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2025年1月スタートのテレビドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
恋愛関係ではない男女をメインに据えたドラマも、この数年で珍しくなくなった。
そういう関係性を無理に作らなくても良質なエンターテインメントを提供できると認知されつつあること、受け手もまた作品のクオリティ重視で、恋愛要素を必須と捉えていないということだと思う。
そんな傾向の中でも、今作『クジャクのダンス、誰が見た?』の山下心麦(広瀬すず)と松風義輝(松山ケンイチ)の関係性は希有で興味深い。
もちろん恋愛ではない。さりとて兄妹のようでもないし、友人でもない。あるいはバディというのも少し違う。
互いに遠慮のない言葉をぶつけ合いながらも、深い思いやりがある。そして近づきすぎることをためらう少しの距離感がある。
心麦と松風の会話はドラマのオリジナルが多く、広瀬すずの凜としなやかな美しさ、松山ケンイチの飄々とした抜け感が二人の会話シーンを魅力的に彩る。
その関係には名前をつけがたい、不思議な縁の二人である。
クリスマスイブの夜に、山下心麦の父・春生(リリー・フランキー)が何者かに殺害され、自宅は放火された。
ほどなく容疑者として遠藤友哉(成田凌)が逮捕されたが、春生が残した手紙にはそれが冤罪であること、弁護士の松風に頼んでその冤罪を晴らしてほしいと書かれていた。
松風とともに事件を調べ始めた心麦は、父の死が20年前に起きた一家殺人事件に深く絡んでいることを知る。
そして心麦自身の出生もまた、過去の殺人事件に深く絡んでいた。
今週は1話かけてじっくりと心麦の出生の秘密が描かれ、前回のラストから一転、心麦はやはり一家殺人事件の生き残り、林川歌だと明確になった。
一家殺人事件の生き残りの赤子に、他の赤子同様に、自由な未来と可能性がある人生を送らせたい。
その一つの願いのために、山下夫妻、赤沢夫妻、産婦人科の阿波山(井上肇)と高畑(大島蓉子)、6人の大人が秘密を飲み込んで書類を偽造する。
そして赤子は愛情深い家庭に迎え入れられ、山下心麦という名で何一つ疑うことなく健やかに成長していく。
それならば、本当は誰の子なのかという追求がどこまで必要なのかと思うが、この疑問は物語そのものと通底しているように見える。
嘘や偽りを起点にした秩序や幸福は、今が平穏ならばそのままでいいのか。
山下夫妻が自分を育ててくれたことに深い感謝と納得を感じながらも、心麦は二人が自分に真実を告げないまま死んでしまったことに深く傷つき、悲しむ。
そして、その悲しみを彼女は「悔しい」と表現する。
このとき、悔しさで泣きじゃくる心麦と、人目もはばからずひっそりと横に立って寄りそう松風が、二人の名前のつかない関係性をこの上なく表現していて印象に残った。
ハグやスキンシップはない、目線を合わせての対面ではない、でも近い場所で守るようにそっと寄り添ってくれる人。
知ったところで何も変わらないとしても、真実を知らねば前に進めないことがある。
今、平穏で誰も損をしていないなら、今更過去の真実などほじくり返さなくてもいいのか。
心麦の出生をめぐる一連のエピソードは、無罪を諦めて死刑判決を受けた遠藤力郎(酒向芳)の存在と表裏になって私たちにささやきかけてくるのである。
あなたが今、目を逸らしていることに素知らぬ顔でいいのか、と。
心麦が林川歌だと明らかになったとはいえ、まだ真相は深い森の中にある。
阿波山と高畑はどうなったのか、医院の火事は赤沢(藤本隆宏)の仕業なのか。
そして春生の手紙に書かれていた五人の最後の一人、廣島育美とは何者なのか。
神井(磯村勇斗)が今回のラストに手に入れた冊子の裏表紙には、水の広告が大きく掲載されていた。
序盤から見え隠れしていた赤沢家の『水』が、一つの線になろうとしている。
その一筋の光が、クジャクが潜む深い森を照らすのかもしれない。
『クジャクのダンス、誰が見た?』第8話あらすじ
自分が東賀山事件の生き残りである林川歌だと知った心麦は、刑事・赤沢に一連の事件の見直しを求める。
一方、法律事務所の松風と波佐見(森崎ウィン)、鳴川(間宮啓行)は赤沢を疑い始めていた。松風は赤沢に繋がるツテを求め、心麦の後押しもあって、母親(宮崎美子)へ会いに福岡へ。
そんな中、神井は東賀山事件の鍵を握る最後の人物に辿り着いていた。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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