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内田裕也の『Rock’n Roll葬』 喪主・長女の謝辞が胸を打つ

By - grape編集部  公開:  更新:

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2019年3月17日、ロック歌手の内田裕也さんが肺炎のため79歳で亡くなりました。

4月3日に東京・青山葬儀所で営まれたお別れの会『Rock’n Roll葬』には、関係者を含め約1700人が参列。

葬儀所内には、裕也さんが生前に愛聴していたエルビス・プレスリーやビートルズなどの音楽が流れていました。

参列できなかったファンもSNS上に想いを投稿し、裕也さんとのお別れを惜しんでいます。

そんな中、喪主で長女の内田也哉子(うちだ・ややこ)さんが葬儀所で読み上げた謝辞が話題になりました。

『Rock’n Roll葬』での内田也哉子さんの謝辞

親族代表として、マイクの前に立った也哉子さん。サンケイスポーツによると、「本日はお忙しいところ、父、内田裕也の『Rock’n Roll葬』にご参列いただきまして、誠にありがとうございます」と述べた後、也哉子さんは裕也さんへの想いを語ったそうです。

分かりえない父・内田裕也さん

私は正直、父をあまりよく知りません。「分かりえない」という言葉の方が正確かもしれません。

けれどそこは、「ここまで共に過ごした時間の合計が数週間にも満たないから」というだけではなく、生前、母が口にしたように「こんなに分かりにくくて、こんなに分かりやすい人はいない。世の中の矛盾をすべて表しているのが内田裕也」ということが根本にあるように思えます。

私の知りうる裕也は、いつ噴火をするか分からない火山であり、それと同時に、溶岩の狭間で物ともせずに咲いた野花のように、清々しく無垢な存在でもありました。

父・裕也さんの激しさと純粋さを感じ取っていた也哉子さん。裕也さんの言動や行動を理解しきれず、大変な苦しみを覚えたこともあったのでしょう。

しかし、裕也さんを慕う人々を見て、也哉子さんは心を動かされたようです。

率直にいえば、父が息をひきとり、冷たくなり、棺に入れられ、熱い炎で焼かれ、ひからびた骨と化してもなお、私の心は涙でにじむことさえ戸惑っていました。

きっと、実感のない父と娘の物語が、始まりにも気付かないうちに幕を閉じたからでしょう。

けれども今日、この瞬間、目の前に広がる光景は、私にとっては単なるセレモニーではありません。

裕也を見届けようと集まられたお一人、お一人が持つ父との交感の真実が、目に見えぬ巨大な気配と化し、この会場を埋め尽くし、ほとばしっています。

父親という概念には到底、納まりきらなかった内田裕也という人間が叫び、交わり、噛みつき、歓喜し、転び、沈黙し、また転がり続けた震動を、皆さんは確かに感じ取っていました。

簡単には整理できない裕也さんへの感情にも、変化が。

也哉子さんは、続けてこのように述べています。

「これ以上、お前は何が知りたいんだ」

きっと、父もそういうでしょう…。

そして自問します。「私が唯一、父から教わったことは何だったのか?」

それは多分、大袈裟にいえば、生きとし生けるものへの畏敬の念かもしれません。彼は破天荒で、時に手に負えない人だったけど、ズルイ奴ではなかったこと。地位も名誉もないけれど、どんな嵐の中でも駆けつけてくれる友だけはいる。

「これ以上、生きる上で何を望むんだ」

そう、聞こえてきます。

娘の目から見た内田夫妻

謝辞の中で、也哉子さんは母・樹木希林さんのことにも触れました。

2018年9月15日に、がんでこの世を去った樹木さん。也哉子さんによれば、「自分は妻として名ばかりで、夫に何もしてこなかった」「こんな自分に捕まっちゃったばかりに…」と、晩年に遠い目をしながらつぶやくことがあったそうです。

また、樹木さんは裕也さんの恋人たちに、あらゆる形で感謝をしてきたとのこと。

也哉子さんはこのエピソードについて、次のように語っています。

私はそんなキレイごとをいう母が嫌いでしたが、彼女はとんでもなく本気でした。まるで、はなから「夫は自分のもの」という概念がなかったかのように。

もちろん、人は生まれもって誰のものでもなく個人です。歴とした世間の道理は承知していても、何かの縁で出会い、メオトの取り決めを交わしただけで、互いの一切合切の責任を取り合うというのも、どこか腑に落ちません。

けれども、真実は、母がそのありかたを自由意志で選んだのです。そして、父もひとりの女性にとらわれず心身共に自由な独立を選んだのです。

離婚をせずに離れて暮らしていた、樹木さんと裕也さん。2人の夫婦関係は特殊なものだったといえるでしょう。也哉子さんには受け入れがたいところもあったはずです。

一方で、也哉子さんは2人の選んだ道を尊重していました。

2人の子である也哉子さんは、自分の気持ちをこのように言葉にしています。

2人を取り巻く周囲に、これまで多大な迷惑をかけたことを謝罪しつつ、いまさらですが、このある種のカオスを私は受け入れることにしました。

まるで蜃気楼のように、でも確かに存在した2人。私という2人の証がここに立ち、また2人の遺伝子は次の時代へと流転していく…。

この自然の摂理に包まれたカオスも、なかなか面白いものです!

「79年という永い間、父が本当にお世話になりました。最後は、彼らしく送りたいと思います」と語った也哉子さん。彼女は最後に、この言葉で締めました。

Fuckin’ Yuya Uchida, don’t rest in peace just Rock’n Roll!!!

「父のロックンロール魂に届け」とばかりに、裕也さんに「安らかに眠るな」と発破をかけた也哉子さん。

愛のこもった言葉に、多くの人が胸を打たれました。

也哉子さんの謝辞を知った人たちは、「さまざまな葛藤の中から出てきた言葉に泣きました」「也哉子さんの感情がガンガンに伝わってきます」「也哉子さん含め、存在が映画の登場人物たちのような人たち」「裕也さんに優るとも劣らない…ロックですね!」などのコメントをSNSに投稿しています。

裕也さんの戒名は『和響天裕居士(わきょうてんゆうこじ)』。「天上でも音楽を奏で続け、平和を願う」という意味が込められています。

きっと、旅立った後も裕也さんのロックンロール魂は尽きないことでしょう。改めてご冥福をお祈りいたします。


[文・構成/grape編集部]

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出典
サンケイスポーツ産経新聞

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