TBS新ドラマ『TOKYO MER』第1話感想 スピード感に、週末の憂うつが吹き飛ぶ
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2021年夏スタートのテレビドラマ『TOKYO MER』の見どころを連載していきます。
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圧巻の冒頭20分だった。ばく然と見ていたのは最初の5分、あとは息を詰めて一気に20分。頭が真っ白になるほどに強烈な『つかみ』であった。
そのドラマはTBS日曜21時、いわゆる日曜劇場で7月4日にスタートした医療ドラマ『TOKYO MER』(主演・鈴木亮平、脚本・黒岩勉)である。
事前の番組紹介では、『MER』とは『モバイル・エマージェンシー・ルーム』を意味し、最新の医療機器とオペ室を搭載した最新の救急車両で事故・災害現場に駆けつけて救命処置を行う医療チームの物語…という触れ込みであった。
最初に聞いた時、「そこそこ面白いんだろうな」とは思った。
医療ものドラマはおおむね安定して面白い。大きなハズレは少ない。しかし実は『とびきり面白い』に出会うこともまた少ない、常々そういうジャンルだと思っている。
シーズンごとにいくつか製作される医療ドラマはさまざまな方法で差別化を図って視聴者に訴求する。それでも個人的には記憶に鮮明に残る医療ドラマは片手に数える程度だ。
今回は最新鋭の救急車両と事故・大規模災害が特色になる内容なのだろうとその時はばく然と思っていた。「まあいいんじゃない」…しかし、そんなぼんやりした予感は、ドラマ開始20分で想定外にくつがえされたのだった。
疾走感、濃厚な内容、すべてが想定外の『TOKYO MER』
その冒頭。最初の出動でTOKYO MERのメンバーはバスとトラックの衝突事故現場に駆けつけ救命にあたる。
鈴木亮平演じる主人公のチーフドクター・喜多見がトリアージタグを握るその瞬間に肌がざわつくような高揚感があった(おそらくトリアージタグは、今作を象徴するアイテムになるのだろう)。
そこから心停止した少女の心臓マッサージをこなし、蘇生を喜ぶ間もなく即座に次は成人女性の腹腔内手術をERカーの中で行う。
喜多見の鮮やかな手さばきの手術に息をのんで見入ったその直後、さらにダメ押しのように、運転席に閉じ込められて意識を失ったトラック運転手の開頭手術に狭い車内で挑む。
とにかくクライシスの密度がとんでもない。事件ものとしても見たことのないような濃さである。当初の「まあいいんじゃない」はどこかに吹っ飛んで、身を乗り出して画面に魅入っていた。
あまりの疾走感に「事件パートがこんな過激な密度では、見ていて1時間集中力が持たないのではないか」と一瞬不安がよぎる。
しかし、クライシスのシーンとそれ以外の緩急はかなり見やすいようにつけてあり、MERの存在自体が東京都と厚労省の争いの焦点になっているという中間の描写は、いかにも日曜劇場らしい毒のある『タメ』の効いた一連であった。
名作を生み出してきた、TBSの日曜劇場枠
もちろん物語の盛り上がりは序盤だけではない。
第1回目の終盤で更なる過酷な災害現場にMERは挑むことになるし、その盛り上げ方の波も見事で、初回延長版だけで1本の映画を見たような濃密さであった。
TBSの日曜劇場は、常に最大公約数を目指している枠だと思う。週末を締めくくるこの時間で、明日から仕事や学校に戻っていく多くの人たちを勇気づけたいという心意気を感じる。
だからこそ、この枠の作品には上質で信頼できるものを見ているという安心感と、浮世の憂さが飛ぶような予想のつかない面白さ、緊張感の相反する要素がいつも詰め込まれている。
そうして日曜劇場は2010年以降もテレビドラマ『半沢直樹』や『JIN-仁-』そして『99.9−刑事専門弁護士−』といった傑作を生み出してきた。
今回、主演をつとめる鈴木亮平の演技には、どんな無謀な展開になったとしても不思議と「この人なら大丈夫」と思わせるだけの善なるもの、圧倒的な安心感がある。
初回を見ただけでも、紛争地帰りの天才救急医という設定のハマり具合は見事だった。いま、日曜劇場の座長として、これほどの適材は滅多にいないと思う。
また、MERメンバーそれぞれも魅力的で、いわゆる『キャラ立ち』している人物ぞろい。いずれ群像劇としての面白さも見えてくるはずだ。
数時間後に来る月曜日の憂うつごと吹っ飛ばしてくれるような上質な医療クライシスドラマ『TOKYO MER』。しばらくは日曜の夜が待ち遠しくなりそうである。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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