manga

「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

By - 植田紫帆  公開:  更新:

Share Post LINE はてな コメント

オダウエダ・植田紫帆さんの写真(画像提供:吉本興業株式会社)

画像提供:吉本興業株式会社

※本記事はgrapeが独自に制作したコンテンツです。また、本記事を経由して商品の購入が発生した場合に、ECサイト等から送客手数料を受領することがあります。

植田紫帆

お笑いコンビ『オダウエダ』でコント師として活躍。NTV『THE W 2021』優勝。 子供の時から続けていることが漫画を読むこと。テレビ番組の企画で漫画紹介を行うほか、YouTubeやラジオを通して『マンガ愛』を熱弁している。grapeでは漫画コラムを連載。 …続きを読む

grapeでは、2025年9月からお笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとの書評連載企画を開始!

漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。

第9回目となる今回は、原作を久住昌之さん、作画を谷口ジローさんが務める『孤独のグルメ』を取り上げます。

オダウエダ・植田紫帆さんの写真(画像提供:吉本興業株式会社)

画像提供:吉本興業株式会社

『孤独のグルメ』の見どころをオダウエダ植田が熱弁

孤独のグルメを読んだのは多分高校の終わり、大学生になったどうかぐらいのタイミング。

2ちゃんねらー(現・5ちゃんねらー)であり、ニコニコ動画にどハマりしニコ厨と化していたネットサーファーは孤独のグルメにネットミームとして出会った。

『孤独のグルメ』の書影画像

FUSOSHA MOOK『孤独のグルメ1』

グルメ漫画はネットミームになりやすい。

一話完結型で使いやすいからなのかも。

以前取り上げた『ドカ食い大好きもちづきさん』や『美味しんぼ』『昼メシの流儀』など。

グルメ漫画でストーリーものは大体バトル漫画、それでも結構ネットミームでみることが多い。

『お前はトリコ?』『出来らぁ!』『お前の料理なんて誰も食わねーよザマーミロ!』『ラーメンハゲ』など。

ご飯とネットは相性がめっぽう良いのである。

孤独のグルメは独特な言い回しとコマ割りが多い。

一番最初にネットで見たのは第一話で主人公の井之頭五郎が初めて入る定食屋さんで注文したご飯が届くシーン。

『孤独のグルメ』の原稿

『孤独のグルメ1』第1話 東京都台東区山谷のぶた肉いためライス ©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

五郎がぶた肉いためととん汁を頼んでしまったことを後悔している。

このシーン、届いた料理を俯瞰で映しているのも独特で、細かな注釈が入っているのも奇妙に見える。

今になっては孤独のグルメ特有の映し方として「これじゃないと」となるのだが、ご飯の在り方を加えようと思ったらいくらでも加えられる漫画的演出を一個も使わずにそのまま映していて妙に現実的。

そう、孤独のグルメは妙に現実的。

とても懐かしく、かつての日本の様子を描写している。

が、知らないのである。

これが孤独のグルメの怖いところなのだが、私はそんな日本知らないのである。

経験してないのに、経験したかのような気持ちになる。

知らんのに知ってる気持ちになる。

なにこれ。

第一話だと、労働者の方がよく訪れるご飯屋さんで豚汁をお持ち帰りした労働者の方が、友達の家に行き、家の外から窓に向かって小学生のようにご飯一緒に食べないかと誘う。

『孤独のグルメ』の原稿

©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

なんて望郷的。

いやそんな景色は見たことない。

労働者の方がよく訪れるご飯屋さんなんか高校、大学の時に行ったことがない。

定食屋さんっぽいのに豚汁とライスだけお持ち帰りなんてどういうことであろうか。

メインは食べないのであろうか。メインも沢山あるのに。

家の外から窓に向かって話したことがない。

私立のカトリックの女子校育ちだったものだからまず友達の家は近くにない。

マンションはあった。でも外から話しかけることなんてない。

なのに見たことあるような気がする。

多分、孤独のグルメは我々の脳みそをいじってきているのだと思う。

ないものをあったように見せているのだと思う。

これも月島さんのおかげということなのだろうか。

一話では別のお店で多分食い逃げかなんか悪いことをしたであろうお客さんが外に追い出される描写がある。

『孤独のグルメ』の原稿

©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

二、三コマに収められ、その後の展開には何も影響を与えない。

これもわざわざ描かなくていい描写である。

しかし、わざわざ描くことによって孤独のグルメの知らないのに知ってる、見たことがある気を起こさせる。

『孤独のグルメ』の原稿

©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

孤独のグルメでは大阪の話もある。

新世界のところは、これは実際経験しているからなんとなくわかる。

ただ、ホテルの前のたこ焼きの屋台は全く知らない。

大阪に屋台でたこ焼き出してそこで食べられるシステムなんかあったん。

『孤独のグルメ』の原稿

『孤独のグルメ1』第7話 大阪府大阪市北区中津のたこ焼き ©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

お持ち帰りだけできる屋台ならまだしも博多の屋台のようなタイプのお店があったなんて全く知らなかった。

知らない地元が描かれるのはなんとも不思議な気持ちがする。

恐ろしさがある。

なのにとても料理が美味しそうに描かれている。

料理を美味しく表すために物語のコマの細部まであえて描かなくていいものを描くぐらいこだわっている。

知らないのに知ってる、そこにかつてあった、いやこのページに確かに存在している、と思わせるからこそぶた肉いためととん汁、ライス、ナスのおしんこ、麦茶はそこに現れる。

五郎のモノローグも料理の邪魔をしない、むしろスパイスになっている。

大好きなシーンが沢山あるので是非読んでみてほしい。

五郎が店長にアームロックするシーンとか。

ドラマもいいですよ。

『孤独のグルメ1』の書影画像

孤独のグルメ1 (扶桑社ムック)

久住昌之 (著), 谷口ジロー (イラスト)


[文/植田紫帆 構成/grape編集部]

Googleで優先するメディアとして追加 grapeにチェックを入れて、おすすめ記事を読む!
ゆきたこーすけさんの漫画『新人配達員コータローがお届けします!』の画像

「失くさないようにしろよ!」 ボールペンを失くした新人配達員、気づいた後の行動が?2025年11月からgrapeで連載が始まった、元配達員であり漫画家の、ゆきたこーすけさんによる創作漫画『新人配達員コータローがお届けします!』。新人配達員のコータローが日々配達をする中で起こる『おもしろエピソード』や、『配達員あるある』などを紹介します!第22話は『コータローのボールペン』です。

佐久間薫さんの創作漫画『おばあちゃん書店員ヨネ子』の画像

おばあちゃん書店員「それ便利だね」 シュリンカーを夏に使うと…「差が激しい!」grapeでは2025年12月から、漫画家・佐久間薫さんによる創作漫画『おばあちゃん書店員ヨネ子』が連載開始!82歳の書店員である主人公・ヨネ子の奮闘ぶりや、『書店あるある』を描く4コマコメディです。

Share Post LINE はてな コメント

page
top