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【石子と羽男 第9話 感想】放火容疑で逮捕された大庭 しかし、その裏には詐欺事件との関連も?

By - grape編集部  公開:  更新:

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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。

2022年7月スタートのテレビドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。

感情を持つことは悪なのだろうか。誰かのために力を尽くし、悩み、苦しむことは無駄なのだろうか?

そして、放火事件をきっかけに『石子と羽男』の最終章が幕を開ける。

トイレの放火容疑で逮捕された大庭

燃え盛る炎の前に立ちすくみ、そして防犯カメラに映った男の姿…。公園のトイレの放火容疑で逮捕されたのは大庭(赤楚衛二)だった。

羽男(中村倫也)が石子(有村架純)からの連絡を受け接見に行くと、大庭は「自分がやった」と自供する。だが理由を聞いても何も答えず、「話すことはない」と去ってしまう。

羽男からその報告を受けた石子は気が気じゃなかった。

直接言葉を交わすことができる羽男と違い、石子は接見ができないパラリーガルだ。

いつものように石子の口癖を茶化したり、冗談を交えながら元気付ける羽男も、予想外の自供に動揺していた。大庭を信じたい気持ちは皆、同じだ。

だが、会えない石子の思いを背負うという責任も強く感じている羽男は、何度も会いに行くことを約束する。

そして二度目の接見。羽男は黙秘を続ける大庭に、石子からの手紙を読み上げる。

「共に時間を過ごす中で、あなたの姿を見てきました」

石子や羽男が見てきた、大庭蒼生という人間の姿。これは私たちも同じように見てきた。

普通なら回想が流れそうな場面に、石子と羽男が紡ぐ言葉だけで語られた。だが、そんな大庭の姿はすぐ思い浮かんだだろう。

大庭を信じたいという気持ちは、見ている私たちもにもあることを実感させてくれるのである。思いはみな、同じだ。

「今度は私が傘を差し出す番です。ずぶ濡れの私を助けてくれたように、私たちが、大庭さんを雨から守ります」

三人が過ごしてきた時間に間違いはなかった。大庭は、自分信じてくれる二人を信じ、声を上げる。

「弟を…守りたかったんです」

大庭の弟・拓(望月歩)は人との関わりが苦手であり、日中は外を出歩けず、夜に散歩することが多かった。

そして偶然実家に帰った夜も、大庭のジャンパーを持って散歩に出かけていたのだが、戻ってきた時はひどく怯え、怪我した状態だったという。

その後、事件を知った大庭は、弟を信じたいという気持ちはありつつも、拓の関与を疑った。

そして取り調べの対応が難しい拓に代わり、犯行を自白することで、矛先が拓に向かないようにしたのだ。

身内の案件だとしてもフラットな立場を守り、拓の無実を証明する証拠を探すことを決める羽男。そして外で心配して待っていた石子に羽男はグーサインを送る。

安堵する石子から感じられたのは、信頼する羽男と大庭、二人への特別な愛だった。

石子と羽男は大庭の実家を訪れ、拓に話を聞きに行くが、ひたすら『蒼』を墨で書き続けるだけで口を閉ざし、真相はわからず。

二人にも人と関わることを避けてきた拓がやったとは思えなかったが、現場にいたであろう拓の話無しに事実に迫ることはできない。

大庭の思いを受け止めた今、石子は道の開けない状況にまた追い詰められそうになっていた。

しかしそんな時、支えになるのはたった一人の相棒だ。

羽男は、石子に手が震える原因を語り出す。父・泰助(イッセー尾形)から言われ続けた、「心の揺れを他人に見せるな」という言葉。逃げ場のない法廷ではそれがプレッシャーとなった。

しかしそれとは真逆に、どんな状況においても解決の糸口を見つけることを諦めず、依頼者に寄り添う石子や綿郎と出会った。

久しぶりに手が震えた時、羽男が感じたのは、そんな石子の存在の大きさだった。

羽男は石子のその心こそが、拓を動かすと信じたいのだ。

石子は自分が誰かに傘を差し出した影で、自分が濡れていることに気づかない。むしろ厭わない性格だ。

そんな石子に傘を差し出してきたのは、羽男なのである。その目に涙を溜めた石子を見て、後ろの窓からお茶を手渡す。

石子はそれからも拓の閉ざされた扉が開くまで諦めず、会い続けるのだった。

不動産投資の詐欺事件との関連が浮上

そんな中、焼死体の身元が会社員・日向理一郎(平田広明)と判明し、ガソリンの成分が検出されたと報道される。早速二人は、被害者の妻・綾(山本未來)に話を聞くことに。

その中で夫の理一郎はあの日、不動産仲介業者のグリーンエステートの『大庭社長』に会いに行ったと話していたことが判明する。

何も知らない二人は驚愕するが、登記簿にははっきりそう書かれていた。

大庭に事情を聞くと、転職先のナカマルの社長・刀根(坪倉由幸)から期待を寄せられ、喜んで名義を貸してしまったのだという。

大庭が自分の手で掴んだ再出発の芽を利用されてしまった。

一方事務所は、石子が綿郎(さだまさし)の案件である不動産投資の詐欺事件の手口が、今回の詐欺と同様であることに気づく。

そして羽男は、防犯カメラ映像から、理一郎がトラックからガソリンを抜き取っている姿を見つけ出す。

綾にそのことを問うと、とある手紙を読み出す。夫から妻への、最期の手紙だ。

理一郎は保険金をもらうため、自らガソリンを被り、大庭の前で自殺するということが綴られていた。そして死ぬ直前、最愛の人に遺す言葉は、「これからは笑って生きて」。

しかしその遺書だけでは自殺とは断定できず、目撃証言が必要になった。全てを託されたのは、拓だ。

弟のためにしたことが結局責任を負わせることになり、大庭は自分を責めた。

その様子に羽男は、反省すべき点は意識させつつも、大庭の潰れそうな心をそっと戻す言葉をかける。

期待されて嬉しい気持ちは間違いではない。弟を思う気持ちに嘘はない。

「本当に悪いのは、人を騙す奴だ」

そして拓は兄が罪を被っていることを知り、証言するため一人、歩き出した。

人と関わることを避けてきた拓が、今度は自分が兄のためにと勇気を出せたのは、単に石子の寄り添いがあったからだ。

拓は手に力をいれ、その指を開く。心を開き、何かを訴えるそのサインを石子は見逃さなかった。

石子は何度も拓の元に通い続けた。彼が大切にする書道や『蒼』に寄り添い、生まれたのは『大庭蒼生』を大切に思う二人の心の繋がり。

「兄ちゃんは僕を庇っただけです」

拓はその日の状況を話し出す。自らガソリンを被った理一郎。そしてライターの火が燃え移るその先に「もう一人、いた」と明かす。

最愛の妻のために、弟のためを思った結果、拗れてしまったこの事件は、まだ終わっていなかった。

そのライターを持つ投資家の御子神慶(田中哲司)が現場にいたもう一人なのか。御子神と会う綿郎の姿の真相とは…。

感情は何のためにあるのか

『心の揺れ』は悪なのだろうか。誰かのために力を尽くし、悩み苦しむことは無駄なのだろうか。

確かに感情論だけでは上手く生きられないし、御子神は「感情こそ判断を見誤らせるもの」だと言う。

人は感情に揺さぶられ、過ちを繰り返し、信じる心が利用されていくのが現実だ。

しかし、その苦しみの連鎖を止めるのも感情だ。

第9話に特に大切にされていたのが『感情』だった。人は感情の伝え方を自然に身につけていく。

言葉にしたり、行動で示したり。そして今話では、石子と理一郎は手紙で伝え、拓は兄への思いを一文字で伝えた。

そして不起訴処分となり出所した大庭と石子の感動の再会を、してやったり顔で邪魔する羽男に、皆で笑う。そして強く抱きしめた大庭の表情が語るのは、何よりの二人への信頼だ。

感情は何のためにあるのか。9話を見終え、そう考えた時、ふと、最愛のだれかのため。という答えが浮かぶのである。

『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』/TBS系で毎週金曜・夜10時~放送

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[文・構成/grape編集部]

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