【『大奥 Season2』感想2話】主演級の女優たちの演技が艶やかな火花を散らす
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年10月スタートのテレビドラマ『大奥 Season2』(NHK)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
伝説のようにカリスマを持ち合わせた人物も、30年程度の経過でその実像がぶれてくる。
ましてや100年近く経てば体制が作られた当時の社会情勢や、その時の切迫感も否応なく失われていく。
それでも生身の人の喜怒哀楽は、螺旋のように似たものを繰り返していく。
※写真はイメージ
名将軍・吉宗を慕う孫の代は、既に名君の本質を捉えていない。
そして将軍の夫として京から来た皇族の青年は、妻との間に子を得られない寂しさを学問や仲間たちとの友情で癒やす。
同じように、かつて京から来て僧から還俗(げんぞく)し、将軍の夫として生きた哀しい青年のように。
絶妙な配役、映像化にあたって編集しながらも原作の本質をとらえた脚本、NHKならではの豪華な美術といった魅力でSeason1から大好評のNHKドラマ10『大奥 Season2』(火曜22時)。
男子ばかりが罹患する架空の伝染病・赤面疱瘡で、男女の人口比が崩れた江戸時代。
労働を担うのは女性となり、一国の主の将軍もまた女が務め、世継ぎを作るために大奥に集められるのは男子であった。
名君と謳われた八代将軍吉宗(冨永愛)は、赤面疱瘡の撲滅を願い、蘭学の研究を始めるよう側用人の田沼意次(松下奈緒)に命ずる。
田沼がその為に呼び寄せたのは、旧知の本草学者・平賀源内(鈴木杏)と、長崎で蘭学を学んだ混血の青年・青沼(村雨辰剛)だった。
※写真はイメージ
赤面疱瘡の研究が更に深まる2話は、学問への真剣さが生み出す楽園のような展開だった。
将軍家治(高田夏帆)と御台所・五十宮(趙珉和)からの支援を受け、当初閑古鳥だった青沼の蘭学教室は軌道に乗る。
生真面目な御右筆助の黒木(玉置玲央)、やんちゃで陽気な伊兵衛(岡本圭人)、お人好しで優しい僖助(新名基浩)といった面々に、源内そして五十宮を加えた教室は身分も才能の有無も、分け隔てのない空間だ。
そこに飛び交う言葉は青沼の長崎弁であり、源内の江戸言葉であり、そして五十宮の京ことばであり、真にボーダーレスな集団であることをよく表している。
原作の紙面でぼんやりと受け取っていたことを音で改めて実感できるのは、映像化ならではだと思う。
だが続くかにみえたその楽園は、五十宮の病死という悲しみを経ることになる。
蘭学の教室を守るために病気を隠し続けた五十宮は、将軍の夫として抱え続けた寂しさを学問と仲間たちが埋めてくれたと青沼に礼を述べる。
※写真はイメージ
その姿は、万里小路有功(福士蒼汰)が家光(堀田真由)との愛に苦しみ抜きながらも、総取締として大奥への献身や、春日局(斉藤由貴)の看病で自らの存在意義を見いだしていった姿と重なる。
そして自らは子をなせなかったと語る五十宮は、その寂しさゆえに先々まで―いずれ赤面疱瘡を防ぐ人痘接種が完成するまで、間接的に蘭学研究を守り、後の世に大きな財産を残すのである。
そして2話では、名君・吉宗の流れを受け継ぐ三人の女が揃う。
一人は生前の吉宗の姿を心に刻み、その政治の志を継ぐ田沼意次。鷹揚だが闘争心の薄い女を松下奈緒が上品に演じている。
一人は孫として吉宗の正義感や清冽さに憧れる松平定信(安達祐実)。潔癖な優等生を安達祐実が張りつめた糸のような緊張感で演じる。
そしてもう一人、同じく吉宗の孫であり、人心を操るモンスター、一橋治済(仲間由紀恵)。優しく語り口も穏やかだが、のっぺりとして見ている者をどこか不安にさせる美しい女を、仲間由紀恵が緻密に演じる。
※写真はイメージ
根回しに長け政策の実行能力も高い田沼だが、その理性と高い能力ゆえに、理由のない悪意を見抜くことが出来ない。
正義感も理想も高い松平定信は、その高さに反比例して視野が狭く、清濁あわせもった判断が出来ない。
そして人の悪意や弱みを増幅して味方に引き込む一橋治済の恐ろしい能力、理想も信念もなく、ただ自分の権力を増大させることを目的にした策略が、二人に忍び寄ろうとしている。
この三人のもつれ合う運命を、いずれも主演級かつ実力派の女優達が華やかな火花とともに演じる場面はさすがの見応えであり、まさに眼福だった。
よしながふみの『大奥』という大作を通して見ても、平賀源内というキャラクターの魅力は際立っているし、その源内に降りかかる運命もまた作中屈指の過酷さである。
※写真はイメージ
その残酷さゆえにドラマは原作通りに描けるだろうかと、ある意味マイルドになっていたらそれはそれでいいのかもしれないと思っていたが、2話のラストを見るかぎり原作通りのようだ。
作り手の覚悟に大きな拍手を送りたい。そしてその覚悟に応えるべく、私たちもこのドラマの行方をしっかり目に焼き付けようと思う。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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