【エルピス 第4話 感想】「かないっこなかった、最初から」その言葉が意味することは
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快挙を成し遂げた狩野英孝、帰国便の搭乗券をよく見ると… 「さすがJAL」の声ホノルルマラソンから帰国する狩野英孝さんに、JALが用意したサプライズとは…。
ロケで出会う人を「お母さん」と呼ぶのは気になる ウイカが決めている呼び方とは?タレントがロケで街中の人を呼ぶ時の「お母さん」「お父さん」に違和感…。ファーストサマーウイカさんが実践している呼び方とは。
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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。
2022年10月スタートのテレビドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』(フジテレビ系)の見どころや考察を連載していきます。
「構わない、全部覚悟の上だ。逃げも隠れもしませんよ」
松本良夫死刑囚(片岡正二郎)冤罪特集を独断で放映した浅川恵那(長澤まさみ)はそう決意し、その瞳は放送中も真っ直ぐを捉え続けていた。
このことは、MCの海老田天丼/海老天(梶原善)を除き、制作を共にした岸本拓朗(眞栄田郷敦)も、反対していたディレクターの名越公平(近藤公園)、そして村井(岡部たかし)をはじめ、誰も知らなかった。
だが、その村井にジャーナリズム魂が舞い戻ったのか、何故か続行のサインを出し、オンエアも番組も無事終了。
その後、浅川は名越からお決まりのパワハラ気味な叱責を受け、岸本にもお決まりの目力で責められる。
その一方で、視聴率万年最下位『フライデーボンボン』史上最大の関心が寄せられるなど、世間の特集への反響は想像以上に大きかった。
浅川と岸本のもとに、被害者遺族として取材した井川晴美の姉・純夏から電話がかかってくる。
純夏は特集を見た晴美の友人が両親に反応を寄せたと聞き、浅川に感謝を伝えたかったのだという。
浅川は直ぐに涙が溢れた。この特集を放送する意義があり、そして自分の正義が報われた瞬間だった。
SNSの反応を見ても、事件をこのまま終わらせまいとするネットユーザーが大半を占め、6.5%という高水準の視聴率も浅川の背中を押した。
放送不適切と判断したはずの局長もなぜか大喜びだった。浅川は、名越の嘘だったと言うが、局長が手のひらを返しただけのようにも思える。
どちらにせよ、浅川の言う通り「おじさんたちのメンツとプライドは地雷」なのだ。自分のポジションを奪われないために必死にしがみつき、小さな塵のようなプライドを大きく見せびらかして壁の頂上で良い顔しながら笑ってるのだ。
そんな状況の中だからまだ危ういことは、浅川自身もわかっていた。
ただ一部が動き出すきっかけをつくっただけである。素直に喜ぶ岸本を制しながら一層意気込む思いだった。
そして、笹岡まゆみ(池津祥子)から行方不明女子中学生の殺害事件の被害者と晴美の死体の特徴が酷似していることを教えられる。
しかも自分達の間違いを隠蔽するためなのか、警察は捜査を終了させるとの噂もあるという。
この情報提供を受け、浅川たちが次に調べたのは、矛盾している目撃証言だった。
目撃者の西澤(世志男)は、「身長160cm、40~50代の作業服を着た男が山道から駆け降りてきて、自転車で立ち去った」と証言していた。
しかし、捜査の初期段階では「ロン毛の若者だった」という別の証言があったはずだ。西澤の証言が嘘ならば、再審請求も通るはず。
しかし『開かずの扉』と呼ばれる日本の司法ではそれが叶うケースの方が少ないのである。
検察側の同意がいるDNA鑑定。隠したいことがあれば思い通りにできてしまうのだ。
可能性はゼロではないものの、こんなのゼロに等しいも同然なのである。
それでも浅川達はまずはこの目撃情報や矛盾点について第二回の特集を組んだ。
ネットメディアを中心に世間の話題として広めることに成功し、名越も局長も後戻りはできなくなっていた。
視聴者を騒然とさせた、長澤まさみのベッドシーン
そんな矢先、浅川は弁護士の木村(六角精児)から、に、再審請求が棄却されたことを告げられる。
視聴率は取れて世の中の関心は強いのにこのタイミングでの棄却。番組と関係があるのかも、何もわからなかった。
しかしこれだけは推測できた。検察や裁判所、そのメンツがプライドが捻り潰されたようなものなのだ。今すぐ手を打ちたいものなのだろう。
「敵はどこにいるかわからない」という村井の言葉が今返ってくる。人のためにある司法が時として敵として立ちはだかる。
岸本は捜索を続ける意思を主張するが、浅川はもう半分諦めるしかないと思っていた。
国中が再審しろと言えば動くかもしれないって思っていたが、ネットの反応なんて世の中の一部の声にすぎない。
時が立てば話題は移り変わり、すぐ鎮火してしまう。
浅川の「勝ってこないよ君」は岸本を含めた若者のような全てが人任せの人間を指しているのだ。国家権力の力を、思い知る。
そして浅川は政治にも精通している斎藤(鈴木亮平)が話したかった内容がこれに関わることなのか気になり始める。
斎藤を家に招き、早速再審請求が棄却されたことや何を話そうとしていたのかを聞くが、「知らない方がいいこともある」と言い、浅川の頬に手を添えるだけだった。
そんな斎藤の誘惑を、浅川は拒むことはできない。
断捨離で全てを捨て去ったはずの部屋にはダブルベットが置かれている。
浅川にとっては、この世界に絶望した時に「大丈夫だよ」と言われ、何かを考えるより、ただ抱かれ、斎藤の温もりを感じる方が自分を守っているように思えるのだ。斎藤もそれを理解っていた。
二人の関係は、ただ愛で繋がっているものではない。
「かなわない、かないっこなかった、最初から」
浅川の言葉はきっと斎藤に、そして権力にも。
開け広げすぎた『パンドラの箱』
そして岸本の元に視聴者から晴美と手紙の文通していたというネタが寄せられるが、斎藤からガセネタと告げられ、まんまと騙されたことを知り、村井とやけ酒をしていた。
そこで村井に改めて忠告を受けるも、「負けちゃダメ」と特集を続ける意思を見せる。
いや、『続けなくては』ならないのだ。
自分が持ち込んだことへの責任を感じているわけではない。ただ彼は、全てにおいて勝ち組であり、エリートである自分を誇りに思い続けるしかないのだ。
でも本当は、もうわかっていた。
勝ち組という幻想の中に居続けるために、友達を見殺しにしてまで、偽りの笑顔を演じてきただけということを。それは、『負けている』と同然だったということを。
「一体僕は、何に勝ってるっていうんですかね」
そう村井に打ち明け岸本は、ある場所へと連れて行かれた。そこは明王中学の校舎が見える屋上だった。村井は当時、生徒の自殺を取材していたのだ。
逃げ出そうとする岸本に、「自分が何に負けてきたのか向き合え。それができねえ限り、お前は一生負け続けて終わるぞ」と忠告する。
岸本の目にはまだ、『あの手』がこびりついていた。
「何だよ勝ち組って、どう勝ってんだよ…!」
岸本は声を枯らして泣く。負け続けた『岸本拓朗』を、他人からも、勝ち組の自分にも見抜かれてしまった。
勝ち組である自分が崩れ始めた。一発指で弾けば簡単に砕け散る、そんな脆い器だった。
いつもそこにあった、奴の強烈な目力は今はもうない。食べ物も喉を通らなかった。
浅川はそんな岸本の様子に「脳天から真っ二つに切られたような気がした」という。
「自分の弱さを、愚かさを、情けなさを、見抜かれたと思った」
そう言いながら鏡を見る浅川。落ちぶれたもう一つの自分を客観視したような気になったという暗示だろうか。
『岸本拓朗』。つまりこれは私、『浅川恵那』なんだと。
そしてラスト、再審請求が棄却されたと聞いた、チェリーこと大山さくら(三浦透子)らしき女性がベランダから転落する。
パンドラの箱を開け広げてしまったことなよる、余波はどこまで続くのか。次週も注目だ。
[文・構成/grape編集部]