幸せとは? 人との相対的な関係と、自然の絶対的な関係とのいいバランスが、幸せ感を高める
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
幸せについて、今思うこと
幸せだなと感じる瞬間。1年に何回、幸せを感じる瞬間があるか。1ヶ月のうちに、1日のうちに、何回幸せを味わうでしょうか。
「ん〜、おいしい。幸せ」
人気ドラマ『きのう何食べた?』の中で、内野聖陽演じるケンジが、西島秀俊演じるシロさんが作ったごはんを食べながらこう言います。
この短い台詞には、おいしいごはんを食べる幸せだけではない、ケンジの人生のすべてがこめられているように思います。
私たちが心底(幸せだなあ)と思えるのは、自分の人生をすべて肯定するような一瞬でもあるのです。
解剖学者の養老孟司(ようろう・たけし)先生による、学生たちに向けての講演をYouTubeで観たことがあります。
「あなたは今幸せですか?」という問いに、多くの学生たちは、「人との関係性に恵まれていることが幸せ」だと答えていたそうです。
このことについて、養老先生は「とても危険な傾向だ」と言います。人間関係に亀裂が入れば、幸せでなくなる。
他人よりも優れていると思えば幸せ感(優越感)を持つ。他人よりも劣っていると思えば、劣等感になる。
それは幸せ感が人との関係に依存していることです。その関係性によって揺らぎが生じることになります。
養老先生は、その感受性の中に『花鳥風月』がないことに警鐘を鳴らします。つらいことがあっても、青い空を見上げてまた頑張ろうと思える。足元に咲いた花に癒される。
高校の修学旅行の帰途、船の上で満天の星空を見たことがありました。迫ってくるような星を見上げながら自分の存在の尊さを感じたことは、今でも私を支えています。
花鳥風月という絶対的な自然の世界は、言い方を変えると『神の手による芸術』。そこには、揺らがないものがあるのです。
アメリカの海洋学者レイチェル・カーソンは、Sense of wonder、『神秘や不思議さに目を見張る感性』の重要性を説きました。これも幸せを感じることにつながる感性だと思います。
好奇心を持ち続けること、小さなことにも感動する感性を大切にすることが、養老先生の言う花鳥風月にもつながることなのではないかと思います。
人との相対的な関係と、自然の絶対的な関係とのいいバランスが、幸せ感を高めるのではないでしょうか。
ケンジが「ん〜、おいしい。幸せ」と人生を味わい尽くしているように、この世界を生きる幸せを味わえることが、実は本当に幸せなことなのだと思うのです。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」