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大泉洋の陰影が描く深い愛 『ちょっとだけエスパー』第6話

By - かな  公開:  更新:

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『ちょっとだけエスパー』に出演する大泉洋さんと宮﨑あおいさんが写る場面写真

SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2025年10月スタートのテレビドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

「3つは持ちきれなかった」と言って、屈託ない笑顔でソフトクリームを持ってくる紫苑(新原泰佑)が何とも愛らしかった。

桜介(ディーン・フジオカ)に、あかんべーするところも、あざといくらい可愛かった。

普段はこんなに屈託ないのに、悪…と、紫苑が思い込んでいる中年たちと戦うときはキリッとしていて思わず見とれる。

漫画『バビル2世』や『幻魔大戦』で育ってきた昭和生まれとしては、「これこれ、これぞエスパーってやつよねえ」とニマニマしてしまう。

とまあ、よく考えたらどう見ても主人公の文太(大泉洋)たちじゃなくて、紫苑たちの方がセオリー通りのヒーローなのだった。

しかし、上司にあれこれ報告し損ねて問題の傷口を広げてしまい、リカバリーに右往左往する中年たちを見ていると、むしろわが身はそっち側だと痛感する。

一気に盛り上がる『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)のSF展開を見ながら、ちょっぴり切なくなってしまうのだった。

『ちょっとだけエスパー』に出演する大泉洋さんと宮﨑あおいさんが写る場面写真

横領で会社をクビになり、家族も仕事も失った文太は、突然ノナマーレという謎の会社にスカウトされて働くことになる。

社長の兆(岡田将生)から提示された採用の条件は、怪しい薬を飲んでエスパーになること、会社から出されるミッションを達成すること、能力は秘密にすること。

そして最後に、人を愛さないこと。

不審に思いながら文太は四季(宮﨑あおい)と名乗る女性と夫婦として暮らし、他の仲間のエスパーたちと出会う。

『ちょっとだけエスパー』に出演する大泉洋さんと宇野祥平さんが写る場面写真

日々ミッションをこなしていく平穏な日々だったが、彼らを悪として敵視する別のエスパーたちが現れる。

ドラマ開始当初はのんびりした癒し系ドラマだと思っていたが、折り返しに入った今回から、一気に骨太のSFになった。

個人的に今回もっとも目を奪われたのは、記憶が混乱して泣きじゃくる四季を抱き寄せる大泉洋の表情だった。

自分は四季にとっての『文ちゃん』ではないと知られる時が近づいていると悟りながら、文太はひたすら四季の悲しみと混乱を思いやっている。

3話で四季にプレゼントを選べなかったシーン同様に、いやそれ以上に、四季を抱き寄せる大泉の表情は陰鬱で途方にくれているのだが、そこにくっきりと愛情が浮かび上がる。

このシーンより前には静電気で髪をふわふわに逆立てながら、市松(北村匠海)たちと深刻な話を交わすという、コミカルとシリアスが入り交じる場面もあった。

独特のおかしみと切なさ、暗転と浮上、緊迫と解放。相反する要素が常に浮き沈みする野木亜紀子の複雑な脚本を体現する座長として、大泉洋は存分の働きを見せている。

『ちょっとだけエスパー』に出演する大泉洋さんが写る場面写真

もう一つ、印象深く感じたのはノナマーレと敵対する久条(向里祐香)と、その友人・八柳(小島藤子)のシーンである。

学生時代のバンド活動の記憶、八柳が使ったシャンプーの香りを気に入って、久条も同じものを使い始めたというエピソード。

ただ表面だけ仲良くしているならば、同じ髪の香りでいることを良しとはしないし、大人になって想い出として残しもしない。

そこには単純に言い表せない、女たち特有の濃密なシスターフッドが漂っていると思う。

飄々と去ったあと、不審死した友がまとっていたシトラスの香りが、久条を怒りの行動に駆り立てたのだとしたら、兆が言う未確認因子の発端は2人の女の絆だということになりはしないか。そう思うと心がざわつく。

6話のラスト、文太は苦しむ四季のために兆に会いに行き、そこで重大な兆の秘密を知ってしまう。

『ちょっとだけエスパー』に出演する岡田将生さんが写る場面写真

30年後に一体何が起きているのか、兆と未来の市松が現代に介入する理由は何なのか。

そしてもう一つ。密かに気になるのは、久条が八柳から聞かされた「薬学系は2チームあって、八柳はAチーム。ミッションはエスパーになれる薬を作る」という言葉だ。

その言葉の裏を返せば、もう一方のチームが何か別の薬を作っていたということになり、不穏極まりない。

人に触れることで知る男と、決して触れることの出来ない男と、その2人を繋ぎ止める重い愛の記憶を抱えた女。

この先は一瞬たりとも見逃せない怒濤の後半になりそうだ。

『ちょっとだけエスパー』に出演する大泉洋さんと岡田将生さんが写る場面写真

[文/かな 構成/grape編集部]

かな

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