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人生を受け入れるため、物語が必要になる時がある 親友を亡くした時、私は…

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

自分という物語を生きてみる

自分という物語を生きる。ある時ふと自分のこれまでの道のりを振り返った時、自分の人生だったのに、自分の人生のようではない…そんな不思議な感覚を覚えたことがありました。幽体離脱と言う言葉は正確ではありませんが、ふっと「今、この瞬間」という時を離れて振り返ってみた時に、物語のように思えたのです。

自分とは何なのだろう…という思い、人生について考えることから1980年代の終わりの頃から「自分探し」という言葉をよく聞くようになりました。しょせん、精神世界ブームです。「自分とは何か」「自分らしさとは何か」多くの若い世代の人たちの中にそのような疑問が漠然と湧き起ったのでしょうか。シャーリー・マクレーンの自己探究の体験が綴られた『アウト・オン・ア・リム』がベストセラーとなり、自分の中にあったもやもやの意味を解決するきっかけとして、多く人が精神世界に興味を持ちました。小学生の頃から「どう生きたらいいのか」ということをテーマとしていた私も、自分の中の核とでもいうのでしょうか、真我への道すじを少しずつ探し始めました。

精神世界、ニューエイジ。この言葉を聞くだけでいかがわしいと感じる人たちもいます。クリスタルを持っていたら幸せになる! 宇宙と交信したい! と、地に足がつかなくなる傾向が大いにあり、「自己探究する」ということ自体が、リアリストの人たちからは胡散臭く思われたのです。確かに、オカルト、新興宗教の台頭を考えると、混沌とした時代でした。その混沌は、自分とは何かと問い続けている人間の心が顕在化したようにも感じるのです。自分とは何か。人生とは何か。これは人間にとって永遠のテーマであり、その答えを求めて哲学、宗教、心理学があり、いまでは量子力学での解釈が為されようとしています。

人生は、ひと色ではありません。同じ悲しみ、孤独であっても、ひとそれぞれの色があるのです。自分の悲しみは自分のものだけであり、誰に理解されるものではありません。例えば、愛してやまない人を失った悲しみと同じ悲しみを、誰にも分かってもらえない。だから人は孤独なのです。確かに孤独なのですが、ひとりではない。ここに生きる悲しみと、救いがあるように思います。

ひと色ではない人生を受け入れていくためには、どこかで物語が必要になる時があります。数年前に、親友が亡くなった時。私はどうしても受け入れることができずに、体調を崩してしまったことがありました。その時、「彼女はたくさんの人を愛して、愛されて、才能を活かしきって、感謝をいっぱいして生きたのだ」と思えた時、親友の死を受け入れることができたのです。この解釈も、物語です。彼女の気持ちなんて、誰にも分からないのですから。でも、私はこう解釈することで救われました。人生の中では、このように物語によって乗り越えていくことがあるのです。

今度の新刊で書いた自分という物語とは、自分を創造していくということについて書きました。人生のシナリオを書く、という意識を持つことによって、創造的に生きることができるのです。そうすると、苦労は武勇伝になり、失敗はすべらない話になる。そしてイバラの道に思えたものは、花道になる。自分を、望むように生きるために創造していく。すると、「自分らしさ」が分かってくる。そして、さらに進化させて「自分ならでは」の道が見えてくるのです。そのプロセスを楽しむことが、生きることのわくわくにつながっていくのではないか。そこに、自分という物語を見いだすことができるのだと思います。

『自分という物語を生きる〜心が輝く大人のシナリオ』 (水王舎)


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
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