「限られた時間」私にとって本当に大切なことは
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
心に響く豊かさを生きる
「僕が若かったら、あなたにモーションをかけたのになあ」
クリニックの待合室で、白髪を薄いパープルに染めたおじいさんが、マスクをした看護師さんに話しかけているのが聞こえてきました。
「あなたはきれいだねえ」
「マスクをしているので…そんなことはないですよ」
「いや、目がとてもきれいです。若かったらなあ。残念だなあ」
「はいっ、体温測ってください」
そう言って、看護師さんは診察室に戻って行きました。
おじいさんは、若い頃はダンディな印象だったのではないかと思います。ちらっと見ると、窓の外に目をやりながら体温を測っているようでした。
最近、「限られた時間」を意識するようになりました。人生100年時代と言われますが、本当にそうなるのはまだ先のこと、平均寿命を考えればあと20年ちょっと。健康寿命を考えれば10年ちょっと。もちろん、「死ぬまで元気」でいるつもりですが、このような数字だけ見ると時間が刻々と限られていくことを突きつけられます。
人生の時間を砂時計のようにイメージすると、なんだか淋しくなります。しかし、人生という時間を砂時計の下の器で考えてみると、豊かな気持ちになります。つまり、人生とは減っていく時間ではなく、どんどん満たされていく時間。自分の器を大きくすれば、それだけ満たすものも増えていく。そう考えると、限られた時間を豊かに満たしていこうを思えます。
何で満たしていくか。『終活』ということを考えれば、どんどん削ぎ落としていくことが良しとされています。必要でないモノを手放し、必要のない感情やこだわりを手放していく。身軽に、シンプルな自分になる。これは大切なことです。必要のないものを手放すと同時に、私は豊かな時間で人生を満たしていきたい。私にとって豊かさとは、愛であり、感動であり、喜びであり、分かち合い、そしてそれらを表現した作品たちです。
先日「心に響く」「心に響いたこと」をテーマにしたエッセイ・コンテスト、grape Awardの表彰式が執り行われ、700近い作品が寄せられました。そこには、決して輝かしいものではない、けれどその人の人生の中で、かけがえのない出来事の感動が綴られています。なんて尊いことか。心に響くとは、命に響くことでもあるのです。思いを言葉に表現することは、自身の存在の証です。審査という形で作品に触れ、覚えた感動は私自身の豊かさに彩りを与えてくれました。
豊かさは日常の中に。それを感じる心と感性は生涯を通して育てていく。そしてそれを表現する喜びを味わっていきましょう。
受賞作品はこちらに。
https://grapee.co.jp/grape_award.html
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」