友人の愛犬が旅立った… 「かけがえのないものが教えてくれること」
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
かけがえのないものが教えてくれること
先日、友人の14歳になった愛犬が難病を患い、静かに旅立ちました。最初の発作から半年、二度目の発作を起こしてからわずか二週間。亡くなったという連絡があり、出先から駆けつけると、わんちゃんはお花に囲まれて、お昼寝しているような姿で横たわっていました。
実は、動物のそのような姿を初めて見たのです。それは、同じように老犬と呼ばれる年齢の犬を飼っている私に、これから訪れるだろう現実を示しているようでした。どうしてこんなに涙が出てくるのかと自分でも不思議なくらい、涙が出て涙が出て、まだ微かに温もりが残る体をさすりました。
子供のいない友人夫婦にとって、わんちゃんは子供同然であり、愛情の限りを注ぎ、最善の選択をしてきたのだと思います。そこにもう温もりももこもことした感触もないという喪失感。生きている間に、何度も経験することだとわかっていても、私たちはその悲しみに慣れることはないのでしょう。
かけがえのないものを手にすると、人は強くなり、そして弱くなる。かけがえのないとは、唯一無二、それに代わるものはこの世界に何ひとつないということです。そのようなものと出会えたことは、この上なくしあわせなこと。それを守るためなら、どんなことでもするでしょう。かけがえのないものは、本能的な強さを目覚めさせます。と同時に、失うことの怖さも湧き上がるのです。
娘が生まれ、抱っこしながら寝かしつけているとき、この世界にこれほど愛しいものがあるのかと、それまで味わったことのない感慨が胸の奥からあふれてきました。そして、もしもこの子を落としてしまったら死んでしまうのだという思いが心をよぎり、そんな想像をしてしまった自分を責めました。
かけがえのないものは強い自分と弱い自分をあぶりだします。そして、弱い自分を超えていくことが、ひとつの学びなのだと教えているのです。
かけがえのないものがたくさんあるしあわせ。この夏に13歳になる愛犬とも、そう遠くない未来に別れる時が来ます。想像するだけで泣けてしまう。人は、悲しみを乗り越えるために「物語」を作ります。
(こんなに愛せたからしあわせなのだ)
(きっと今は、痛みから解放されて喜んでいるのだ)
そう思うことで、慰められ、時をかけて乗り越えていくのでしょう。でも、失った悲しみは消えません。悲しみを小脇に抱えながら、少しずつ、ひとつずつ、乗り越えていくのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」