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「はずかしいという心は自分を守る」 自分の言葉を改めて振り返ってみる

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

言葉が自分を守るということ

「はずかしいという心は自分を守る」

数学者の岡潔氏のこの言葉に出会ったとき、思わず膝を叩きたくなるようなインパクトを覚えました。消えてしまいたくなるほどの『はずかしさ』。

はずかしくて、一歩踏み出せないことも、踏み止まることもあります。この場合の『はずかしいという心』とは、発表会ではずかしくて舞台に上がれない、というのとは少し違います。

生き方、行動、態度、言葉、身嗜みなどにおいて、自分のはずかしい点に気づくことが大切であると、岡潔氏は主張します。

はずかしいことをしてしまっても、はずかしいと自覚できたなら改善できる。はずかしいと思ったら、やらない。はずかしいという心は、ストッパーになる。

このような意味で、「身を守る」ということになります。はずかしいという自覚がないと、自分自身を卑しめていくことになる、というわけです。

自分にとって何がはずかしいことなのか。自分自身の基準をしっかりと持つことが大切なのです。

この感性は、美意識とよく似ています。何を美しいと思い、何を美しくないと思うか。

例えば、ある人にとっては『人と比べるのは美しくないこと』であっても、人によっては無自覚のまま人と比べて優越感や劣等感を思えているかもしれません。

それを美しいと思わなければ、はずかしさを感じることなく優越感や劣等感に自分を明け渡してしまうのです。

電車の中でお化粧をするのも、自慢話ばかりをするのも根は同じ。そのような行動が美しいか美しくないか。自分の中の基準、価値観によって、行動も言動も変わるのです。

私は小さい頃、両親から「はしたないことはしない」という言葉をよく聞きました。お行儀悪くしていると、「はしたない格好はやめなさい」と注意されたものです。

ところが、最近「はしたない」という言葉を聞きません。若い人たちに「はしたない」という言葉を知っているか尋ねてみると、ひとりも知らなかったのです。美しい日本語が失われていきます。

すると、言葉に宿っていたその精神も失われ、はしたないことが増えるのです。これは由々しきことではないでしょうか。

「はずかしいという心は自分を守る」

そして、岡潔氏は次のように続けます。

「思いやりは慈悲の心を育てる」

わかっていたつもりでも、できていないことがたくさんありますね。言葉で自分を守る。この機会に、自分の言葉を改めて振り返ってみようと思います。

※記事中の写真はすべてイメージ


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
単行本「大人の結婚」

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