「いただきます」 「ご馳走さまでした」日常の中にある感謝を表す所作や言葉 その深い意味を知る
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
お箸のお作法から学ぶこと〜日常の中にある日本の精神文化
「いただきます」
「ご馳走さまでした」
命をいただきます。そして作ってくれた人への感謝の気持ち。食事を前にしたとき、日本人の多くの人は自然に「いただきます」と口にします。
他の国にはみられない食事の挨拶であり、この二つの言葉を他言語に翻訳するのはとても難しいと言われています。なぜか。
「いただきます」「ご馳走さまでした」には、日本人の『心』と『信仰心』がこもっているからだと考えます。
命をいただくことで自分の命を守り、つないでいく。人は森羅万象の中で生かされているという、いにしえの日本人の『心』『信仰心』が、この言葉を通して今も受け継がれ、私たちの中に流れている。
これは、実は驚くべきことではないかと思うのです。まさに精神文化の継承です。
もう一つ、「いただきます」という心を表しているのが、箸の置き方です。なぜ日本では、お箸はお膳の手前に横に置くのでしょうか。
私たちと料理を隔てるようにお箸を置くのは、そこに『結界』を作るためだそうです。お箸の手前にいる私たちは『生ける者』、そしてお箸の向こうにあるのは『神様からの賜物』です。
汚れたものと神聖なものの境界をはっきりさせるために、お箸を横に置くのです。そして「いただきます」という言葉で結界を解き、自分たちの命をつなぐ食事をいただくのです。
またお箸の使い方にもお作法があります。調べたところ、お箸にまつわる作法は、なんと50もありました。
これも見た目のお行儀だけでなく、命をいただくお箸を大切に扱うこと、感謝の気持ちを大切にすることを、50の作法は示しているのでしょう。
器を手に取って食べるのは、日本の習慣です。他の国では、器を手に取って食べるのは無作法とされています。
和食器には、料理の種類によってさまざまな形があり、飯碗もお椀も掌にすっぽりと収まる大きさです。
掌に収まる器は手に取って。平皿は置いたまま。これは私たちがごく普通に身につけてきた習慣です。そこで気をつけたいのが、器の縁に親指をかけない、ということ。
お箸を横に置くのと同じように器の縁も結界であるために、縁を支えるように持つのがお作法だそうです。そこにも感謝の気持ちが表れるのですね。
私たちの日常の中に感謝を表す所作や言葉がたくさんあります。その深い意味を知ることにより、生かされているありがたさがさらに身に染みます。
こうした日本の精神文化の中から、人と人の穏やかな調和が生まれるのではないでしょうか。そうありたいと、思います。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
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⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」