『道ならぬ恋』と『不倫』 表現によって印象が変わる By - 吉元 由美 公開:2017-09-16 更新:2017-09-16 不倫吉元由美 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さん。先生の日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…様々な『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 言葉の選びかたで世界を変えていく 『道ならぬ恋』と『不倫』。同じ意味を表す言葉でも、表現によってこれだけ印象が変わる。「道ならぬ恋」という言葉には物語があり、せつない気持ちになりながら観た古い映画のようです。『逢いびき』『旅情』など、映像と音楽、台詞の美しさ、そして沈黙が語る言葉の深さ。そのような恋に憧れることはありませんでしたが、人の気持ちのどうにもならなさを、せつなく思ったものでした。 90年代にベストセラーになった『マディソン郡の橋』は映画にもなり、私もハンカチ片手に観に行きました。数日間の出来事を一生の宝物にした女性のせつなさと、その思いの美しさに心を打たれました。 この『マディソン郡の橋』がヒットしたことを、マスコミは『不倫ブーム』というような言葉で表現しました。『不倫』という言葉で表現されたことで、どこか薄汚れた印象になってしまったような気がします。『道ならぬ恋』の主人公たちは、それこそその恋をお墓の中に持っていくくらいの覚悟があったのです。そして、その恋を『物語』として大切にした。だからこそ、ラブストーリーになるのです。 人生には『物語』が必要です。困難なことに出合った時、それを乗り越えるために私たちは無意識のうちに『物語』を作ります。二年前に大好きな友人が亡くなった時、私はそのことをなかなか受け入れることができませんでした。まだ若いのに、やりたいことがたくさんあっただろうに。でも、棺の中の本当に美しい顔を見た時に、(すばらしい才能を生かして、多くの人に感動を与えて、たくさんの人に伝えて、素敵なパートナーもいて、彼女は幸せないい人生を送ったのだ)と思いました。 これは、私の『物語』なのかもしれません。でも、(まだ若いのに)と思い続けていたなら、私はいつまでも引きずってしまったかもしれません。自分に都合のいい勝手な解釈をするということではなく、乗り越えるために無意識が作る解釈が『物語』なのです。亡くなった人を思って思わず空を見上げる。これも、物語なのだと思います。 さて、私たちの人生にあった現実の物語。そして、無意識のうちに作る魂の再生のための『物語』。その物語を語る時、言葉1つで、伝わりかたも印象も変わります。『道ならぬ恋』と『不倫』のように、その言葉によってその恋の色模様が変わるのです。このように言葉によって色模様が変わるのだとしたら、素敵に彩りたい。ふっと交わす会話も、ブログやFacebookに書く文章も、自分らしい言葉で美しく伝えたいものです。 「言葉はその人を語る」 言葉はその人の感性と心を表します。たとえ美辞麗句であろうと、心が伴っていなければ透けて見えてしまう。どの言葉を選ぶかによって、見える世界が変わってくるのです。 私の『言の葉塾』という文章教室では短いエッセイを添削しながら授業を進めます。一年近く経つと、それぞれの文体のスタイルができ、まさに『その人』を表す文章になってきます。内なるエレガンスを大切に磨きながら、言葉を紡ぐ。そこに、新しい『物語』が生まれます。 grapeでも『心に響く』記事コンテストの募集が始まりました。自分の中で生まれた『物語』でも、日々の物語でも、ぜひ言葉に綴ってみてください。新たな発見を宝物に。言葉の力を感じてみてください。 [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 関連記事 夢みる結婚から、覚悟の結婚へ 作詞家・吉元由美、女性の心をラクにする言葉 夜見た夢を通訳してみよう 結婚にもきっかけになる『夢』がある 他人が見る夢に、自分の問題解決のヒントがある? 『集団的無意識』の不思議 若い女性は菓子パンの夢を見る? 「食べ物の夢」が意味するものとは 落ち込んだ時に行くべき場所とは パワースポットは与えられるものではない 友達の幸せそうなFacebookの投稿「いいね!」ではなく、こうしよう 「ちょっと、ねえちゃん」酔っ払った迷惑オジサンが地雷を踏みぬいた話 「気にしない」「こだわらない」 スルーする力で軽やかに 先生「まじめに歌え」 それから歌えなくなった私 雲の上から下を見ていたらママを見つけて「ママがいたー!」と思ってお腹に入ったの 若者「歌謡曲?ダサい」 心を震わせるコード進行は日本人の心をつかむ 「言葉が乱れると国力が落ちる」 言葉はただの伝達手段でも、記号でもない かぐや姫の『神田川』に質問が 「石鹸かたかた鳴った」とはどういう意味ですか? 「いま、この瞬間を生きる」ゲリラ豪雨の時代に 「11歳の愛犬は何を考えてる? アニマルコミュニケーターを通じて対話してみた 女性の間で『終活』がブーム 批判を愛のフィルターに替えて 『香りの記憶』 たどっていくと、遠い日の自分の物語につながる 肌の色でなく、人格で評価される国に暮らす夢 映画『ドリーム』が教えてくれたこと 飛行機に預けた荷物が出てこない! 私たちにできる予防策は? ハワイで挙式を行った際の、サプライズ 母の隣に立っていた人物に「泣けて泣けて」 ご飯を炊く時、小さじ1杯ずつ入れると… 「おかずいらない」「止まらなくなる」『究極の塩むすび』の作り方って?ご飯を炊く時に、調味料を小さじ1杯ずつ入れると…。 小学生が『春のパンまつり』の疑問を手紙で山崎製パンに送ったら…? 「神対応」と称賛の声小学生が、山崎製パンに手紙を送ったら…?対応に「素敵な企業」「神対応ですね」と称賛の声が続出しています。 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さん。先生の日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…様々な『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
言葉の選びかたで世界を変えていく
『道ならぬ恋』と『不倫』。同じ意味を表す言葉でも、表現によってこれだけ印象が変わる。「道ならぬ恋」という言葉には物語があり、せつない気持ちになりながら観た古い映画のようです。『逢いびき』『旅情』など、映像と音楽、台詞の美しさ、そして沈黙が語る言葉の深さ。そのような恋に憧れることはありませんでしたが、人の気持ちのどうにもならなさを、せつなく思ったものでした。
90年代にベストセラーになった『マディソン郡の橋』は映画にもなり、私もハンカチ片手に観に行きました。数日間の出来事を一生の宝物にした女性のせつなさと、その思いの美しさに心を打たれました。
この『マディソン郡の橋』がヒットしたことを、マスコミは『不倫ブーム』というような言葉で表現しました。『不倫』という言葉で表現されたことで、どこか薄汚れた印象になってしまったような気がします。『道ならぬ恋』の主人公たちは、それこそその恋をお墓の中に持っていくくらいの覚悟があったのです。そして、その恋を『物語』として大切にした。だからこそ、ラブストーリーになるのです。
人生には『物語』が必要です。困難なことに出合った時、それを乗り越えるために私たちは無意識のうちに『物語』を作ります。二年前に大好きな友人が亡くなった時、私はそのことをなかなか受け入れることができませんでした。まだ若いのに、やりたいことがたくさんあっただろうに。でも、棺の中の本当に美しい顔を見た時に、(すばらしい才能を生かして、多くの人に感動を与えて、たくさんの人に伝えて、素敵なパートナーもいて、彼女は幸せないい人生を送ったのだ)と思いました。
これは、私の『物語』なのかもしれません。でも、(まだ若いのに)と思い続けていたなら、私はいつまでも引きずってしまったかもしれません。自分に都合のいい勝手な解釈をするということではなく、乗り越えるために無意識が作る解釈が『物語』なのです。亡くなった人を思って思わず空を見上げる。これも、物語なのだと思います。
さて、私たちの人生にあった現実の物語。そして、無意識のうちに作る魂の再生のための『物語』。その物語を語る時、言葉1つで、伝わりかたも印象も変わります。『道ならぬ恋』と『不倫』のように、その言葉によってその恋の色模様が変わるのです。このように言葉によって色模様が変わるのだとしたら、素敵に彩りたい。ふっと交わす会話も、ブログやFacebookに書く文章も、自分らしい言葉で美しく伝えたいものです。
「言葉はその人を語る」
言葉はその人の感性と心を表します。たとえ美辞麗句であろうと、心が伴っていなければ透けて見えてしまう。どの言葉を選ぶかによって、見える世界が変わってくるのです。
私の『言の葉塾』という文章教室では短いエッセイを添削しながら授業を進めます。一年近く経つと、それぞれの文体のスタイルができ、まさに『その人』を表す文章になってきます。内なるエレガンスを大切に磨きながら、言葉を紡ぐ。そこに、新しい『物語』が生まれます。
grapeでも『心に響く』記事コンテストの募集が始まりました。自分の中で生まれた『物語』でも、日々の物語でも、ぜひ言葉に綴ってみてください。新たな発見を宝物に。言葉の力を感じてみてください。
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」
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