人は、どのように変容するのか 夏の終わり、生きものたちの姿に、ふと自分を重ねる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
生きること、生きていくこと〜夏の終わりの山寺にて
京都の山寺でのこと。山門を入り、苔むした境内を歩いていると、ころっとした一匹の蜂に出会いました。
その蜂は木に登ろうとするのですが、登っては滑り落ち、登っては滑り落ち。地面に落ちて転がっても、また登りはじめる。それでもまた滑って落ちてしまう。
今度は、木の根を越えながら歩きだす。どこへ向かおうとしているのか、くねくねと地を這う木の根をよろよろと越えながら、やがて見えなくなりました。
けなげです。触覚や翅が傷ついて飛べなくなったのか、命の終わりが近づいているのか。
飛べなくなったら、歩くしかありません。そうして蜂は生きていく道を見つけて進んでいく。蜂に思考能力があるのかわかりませんが、生き抜くために本能が歩くことを選択したのです。
そこには欲も得もなく、ただ命の営みがあるのでした。
8月も終わりに近づいた山寺の木立の中で、時折、思い出したように蝉が鳴き始めました。夏の盛りであれば、境内には蝉の大合唱が響いていたことでしょう。
土の中で長い時間を過ごし、短い夏を謳歌するように鳴き、そして命を終える。
蝉の幼虫は約7年間土の中で過ごし、成虫になって土から出ると2週間から1か月で命を終えます。その2週間は、子孫を残す使命を果たすために使われます。
それを儚い一生という見方もありますが、土の中の幼虫はゆっくりと幾度かの脱皮を繰り返しながら変容しているのです。
自由に飛び回り、大きな声で鳴き、そしてからからになって死んでいくのもドラマチックですが、土の中で変容を繰り返す命には壮大なドラマがあります。
私たちの人生もひと色ではありません。年老いて体が衰えることは、決して嘆くようなことではありません。
何十年もの時間、喜びがあり悲しみがあり、さまざまな努力や苦労があったはずです。時代に翻弄され、思うように生きられなかった時もあったかもしれない。
よくここまで生き抜いてきた。母が人生を終える姿を見、父が老いていく姿を見ていると、命を全うしていくことの尊さに胸が震えます。
木に登ることを諦め、歩いていった蜂も、短い夏を飛び回った蝉も、変容しながら命の営みのままに。
人は、どのように変容するのでしょうか。自分をより進化させ、作り替えていく。それは心の仕事です。
悲しみがあっても苦労があっても、変容のプロセスなのだと解釈すると、また人生の向き合い方が違ってくるかもしれません。
夏の終わり、生きものたちの姿に、ふと自分を重ねてみました。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」