「ちょっと、ねえちゃん」酔っ払った迷惑オジサンが地雷を踏みぬいた話 By - 吉元 由美 公開:2017-06-03 更新:2017-06-03 吉元由美 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さん。先生の日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…様々な『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 過ぎ去れば、みんな笑い話 先日、出張で福岡空港に降り立った時のこと。「Pエアラインで成田へご出発の○○様、出発のお時間ですので至急搭乗口までお越しください」というアナウンスが繰り返し流れていました。「○○様〜」と名前を呼びながら、地上係員が走り回っています。時計を見ると、出発時刻の1分前。きっと機内では「最後のお客様をお待ちしています」というアナウンスが流れていることでしょう。そして最後に乗ってきた○○様は、みんなの視線をあびながら席につく……のでしょう。 グループで旅行をすると、中にはひとり、このような「困った人」がいるものです。福岡空港でこのアナウンスを聞きながら、インド旅行で一緒だった、あの忘れられない、今となってはコント以外の何ものでもない「困った人」を思い出しました。 その困った人は建築会社の社長のおじさま。ニューデリーの空港に着いた途端、 「あっついなあ。なんでこんな所に来ちゃったのかなー、大失敗だな、こりゃ」 と大声で騒ぎ始めました。確かに、釜茹での湯気の中にいるような熱さと湿気は、これから始まる一週間のインドの旅の苛酷さを予感させました。社長はランチでも、ディナーでもバスの中でもビールを飲み続け、ほぼ一日酔っぱらい状態。声も態度もデカい。ガイドの話は聞いていない。三日目だったか、たまたま夕食のテーブルが一緒になり、やれやれという感じで話を聞いている時、社長は私の地雷を踏んだのです。 「ねえちゃん、ウェトレス、呼んでくれる?」 「ねえちゃん?」 思わず聞き返した私に、社長の奥様が焦って、 「あなた、吉元先生に何を言うの! ごめんなさい、ちょっと酔っぱらってて……」 と。いや、酔っぱらっていなくても、この人は私を「ねえちゃん」と呼んだに違いない。まあ、「おばちゃん」じゃないだけよかったのかと思いつつ、やはり「ねえちゃん」はいただけません。 ねえちゃん発言の翌日、社長がバラナシの空港のトイレの水を飲んでいたとの目撃情報があるも、社長はお腹を壊すことなく、少しも弱ることもなく、とうとう帰国日を迎えました。 その日、いつも大幅に遅延するインド航空のフライトが「奇跡的に」オンタイムで出発する予定でした。ほっとした気持ちで機内に乗り込み、離陸を待っていました。ところが、30分以上経っても離陸しない。機内放送もない。そして社長もいない。すると、社長と係の人が乗り込んできて、社長はその人にガンガン怒られているのでした。どうやら、免税店で買ったウィスキーをどこかに置き忘れたらしく、それを探していて時間に遅れたとか。インド航空の「奇跡」を覆したこの社長以上の困った人に、未だ出会っていません。 インドの旅から10年近く。時が経ってみると、あの困り者の社長のあれもこれも笑える想い出になっているのでした。不思議の国インドというよりも、困った人とのインドの記憶が鮮明なのはかなり残念……。でも、こうしてピンチやトラブルを笑い話や武勇伝に変えてみると、人生はおもしろく、味わい深くなっていくものなのです。 [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 関連記事 夢みる結婚から、覚悟の結婚へ 作詞家・吉元由美、女性の心をラクにする言葉 夜見た夢を通訳してみよう 結婚にもきっかけになる『夢』がある 他人が見る夢に、自分の問題解決のヒントがある? 『集団的無意識』の不思議 若い女性は菓子パンの夢を見る? 「食べ物の夢」が意味するものとは 落ち込んだ時に行くべき場所とは パワースポットは与えられるものではない 友達の幸せそうなFacebookの投稿「いいね!」ではなく、こうしよう ご飯を炊く時、小さじ1杯ずつ入れると… 「おかずいらない」「止まらなくなる」『究極の塩むすび』の作り方って?ご飯を炊く時に、調味料を小さじ1杯ずつ入れると…。 小学生が『春のパンまつり』の疑問を手紙で山崎製パンに送ったら…? 「神対応」と称賛の声小学生が、山崎製パンに手紙を送ったら…?対応に「素敵な企業」「神対応ですね」と称賛の声が続出しています。 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さん。先生の日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…様々な『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
過ぎ去れば、みんな笑い話
先日、出張で福岡空港に降り立った時のこと。「Pエアラインで成田へご出発の○○様、出発のお時間ですので至急搭乗口までお越しください」というアナウンスが繰り返し流れていました。「○○様〜」と名前を呼びながら、地上係員が走り回っています。時計を見ると、出発時刻の1分前。きっと機内では「最後のお客様をお待ちしています」というアナウンスが流れていることでしょう。そして最後に乗ってきた○○様は、みんなの視線をあびながら席につく……のでしょう。
グループで旅行をすると、中にはひとり、このような「困った人」がいるものです。福岡空港でこのアナウンスを聞きながら、インド旅行で一緒だった、あの忘れられない、今となってはコント以外の何ものでもない「困った人」を思い出しました。
その困った人は建築会社の社長のおじさま。ニューデリーの空港に着いた途端、
「あっついなあ。なんでこんな所に来ちゃったのかなー、大失敗だな、こりゃ」
と大声で騒ぎ始めました。確かに、釜茹での湯気の中にいるような熱さと湿気は、これから始まる一週間のインドの旅の苛酷さを予感させました。社長はランチでも、ディナーでもバスの中でもビールを飲み続け、ほぼ一日酔っぱらい状態。声も態度もデカい。ガイドの話は聞いていない。三日目だったか、たまたま夕食のテーブルが一緒になり、やれやれという感じで話を聞いている時、社長は私の地雷を踏んだのです。
「ねえちゃん、ウェトレス、呼んでくれる?」
「ねえちゃん?」
思わず聞き返した私に、社長の奥様が焦って、
「あなた、吉元先生に何を言うの! ごめんなさい、ちょっと酔っぱらってて……」
と。いや、酔っぱらっていなくても、この人は私を「ねえちゃん」と呼んだに違いない。まあ、「おばちゃん」じゃないだけよかったのかと思いつつ、やはり「ねえちゃん」はいただけません。
ねえちゃん発言の翌日、社長がバラナシの空港のトイレの水を飲んでいたとの目撃情報があるも、社長はお腹を壊すことなく、少しも弱ることもなく、とうとう帰国日を迎えました。
その日、いつも大幅に遅延するインド航空のフライトが「奇跡的に」オンタイムで出発する予定でした。ほっとした気持ちで機内に乗り込み、離陸を待っていました。ところが、30分以上経っても離陸しない。機内放送もない。そして社長もいない。すると、社長と係の人が乗り込んできて、社長はその人にガンガン怒られているのでした。どうやら、免税店で買ったウィスキーをどこかに置き忘れたらしく、それを探していて時間に遅れたとか。インド航空の「奇跡」を覆したこの社長以上の困った人に、未だ出会っていません。
インドの旅から10年近く。時が経ってみると、あの困り者の社長のあれもこれも笑える想い出になっているのでした。不思議の国インドというよりも、困った人とのインドの記憶が鮮明なのはかなり残念……。でも、こうしてピンチやトラブルを笑い話や武勇伝に変えてみると、人生はおもしろく、味わい深くなっていくものなのです。
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」
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