「ちょっと、ねえちゃん」酔っ払った迷惑オジサンが地雷を踏みぬいた話
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臨時休業をした整体院 入り口にあった『貼り紙』に「これは仕方ない」「いい職場」2024年11月14日に、ある理由で臨時休業をした、同店。 「お許しください」といった言葉とともに、臨時休業を知らせる貼り紙を、Xのアカウント(@msgCura)で公開したところ、大きな注目を集めることになりました。
買った花束を店に置いていった女性 その後の展開に「鳥肌が立った」買った花束を店に置いていった女性 その後の展開に「鳥肌が立った」
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さん。先生の日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…様々な『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
過ぎ去れば、みんな笑い話
先日、出張で福岡空港に降り立った時のこと。「Pエアラインで成田へご出発の○○様、出発のお時間ですので至急搭乗口までお越しください」というアナウンスが繰り返し流れていました。「○○様〜」と名前を呼びながら、地上係員が走り回っています。時計を見ると、出発時刻の1分前。きっと機内では「最後のお客様をお待ちしています」というアナウンスが流れていることでしょう。そして最後に乗ってきた○○様は、みんなの視線をあびながら席につく……のでしょう。
グループで旅行をすると、中にはひとり、このような「困った人」がいるものです。福岡空港でこのアナウンスを聞きながら、インド旅行で一緒だった、あの忘れられない、今となってはコント以外の何ものでもない「困った人」を思い出しました。
その困った人は建築会社の社長のおじさま。ニューデリーの空港に着いた途端、
「あっついなあ。なんでこんな所に来ちゃったのかなー、大失敗だな、こりゃ」
と大声で騒ぎ始めました。確かに、釜茹での湯気の中にいるような熱さと湿気は、これから始まる一週間のインドの旅の苛酷さを予感させました。社長はランチでも、ディナーでもバスの中でもビールを飲み続け、ほぼ一日酔っぱらい状態。声も態度もデカい。ガイドの話は聞いていない。三日目だったか、たまたま夕食のテーブルが一緒になり、やれやれという感じで話を聞いている時、社長は私の地雷を踏んだのです。
「ねえちゃん、ウェトレス、呼んでくれる?」
「ねえちゃん?」
思わず聞き返した私に、社長の奥様が焦って、
「あなた、吉元先生に何を言うの! ごめんなさい、ちょっと酔っぱらってて……」
と。いや、酔っぱらっていなくても、この人は私を「ねえちゃん」と呼んだに違いない。まあ、「おばちゃん」じゃないだけよかったのかと思いつつ、やはり「ねえちゃん」はいただけません。
ねえちゃん発言の翌日、社長がバラナシの空港のトイレの水を飲んでいたとの目撃情報があるも、社長はお腹を壊すことなく、少しも弱ることもなく、とうとう帰国日を迎えました。
その日、いつも大幅に遅延するインド航空のフライトが「奇跡的に」オンタイムで出発する予定でした。ほっとした気持ちで機内に乗り込み、離陸を待っていました。ところが、30分以上経っても離陸しない。機内放送もない。そして社長もいない。すると、社長と係の人が乗り込んできて、社長はその人にガンガン怒られているのでした。どうやら、免税店で買ったウィスキーをどこかに置き忘れたらしく、それを探していて時間に遅れたとか。インド航空の「奇跡」を覆したこの社長以上の困った人に、未だ出会っていません。
インドの旅から10年近く。時が経ってみると、あの困り者の社長のあれもこれも笑える想い出になっているのでした。不思議の国インドというよりも、困った人とのインドの記憶が鮮明なのはかなり残念……。でも、こうしてピンチやトラブルを笑い話や武勇伝に変えてみると、人生はおもしろく、味わい深くなっていくものなのです。
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」
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