感染拡大でピリピリしがちな日常 『小さな感謝』を忘れずにいたい
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
小さな感謝が明日を作る
電車の中でお年寄りに席を譲るとき、私は父や母のことを思ったものでした。父も母もこうして席を譲ってもらえるように。祈るような気持ちで、座席を立ちました。
母は4年前に亡くなり、父も89歳。父も滅多に電車に乗ることはなくなりましたが、必要としている人に必要としているものが届きますように、という思いで席を立ちます。
車を運転しているとき、車線変更をしようとしてもなかなか入れてもらえないことがあります。そんなときに車間を開けてくれる車をサイドミラーに見つけると、感謝が湧き上がります。
少々大げさに聞こえるかもしれませんが、我先にとばかりにスピードを上げて追い抜いていくドライバーの中にあって、譲ってくれる人には心の大きさを感じてしまうのです。
(譲ってくれた人に、今日いいことがありますように)
ハザードランプを点滅されて「ありがとう」を伝えながら、小さく祈ります。
先日、友人が交番で道を尋ねたときのこと。彼女はマスクを忘れたために、交番の中に入らずに外から尋ねたそうです。
すると中にいた警官から「マスクをしなさい!」と怒鳴られたそうです。
この出来事に現れているように、多くの人の中に感染への不安が広がり、ピリピリとした雰囲気があります。マスクをしていないことで暴力を受けたり、排除される。これは、明らかに行き過ぎた傾向だと思います。
マスク警察、社会不安によって人を裁く方向へ向かうのは、決して好ましいとは言えません。
いま、この閉塞感のある時期、大切なのは本当にささやかな幸せに気づくことであり、ささやかなありがたさを感じること、小さな感謝を伝えることではないでしょうか。
言葉で伝えられなくても、心の中でちゃんと伝える。人と人をつなぐのは批判ではなく、あたたかい心の通い合いです。
自由に人の行き来ができない分断されたときだからこそ、目に見えても見えなくても、言葉にしてもしなくても心で伝えていくことだと思うのです。それは確実に、次の社会を作る小さな礎になるのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」