新しい自分になるのは、思うよりも難儀なこと 一つずつ、いまできることから始めてみる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
小さな命の大きなドラマ
ベランダのイタリアンパセリの鉢に、蝶々の幼虫を2匹見つけました。グリーンの体に黒の横縞。その縞にオレンジ色のドット。足?に黒のドット。
葉を食べている様子はなく、動かずにじっとしている。昆虫にまったく詳しくないのですが、これはただものではない感じがして、そのままそっとしておきました。
調べてみると、どうもキアゲハのようです。キアゲハはセリ科の葉を好むとのこと。イタリアンパセリについていたところを見ると、やはり間違いはなさそうです。
冬に向かうこの時期に幼虫だとすると、蛹になって越冬するのでしょうか。寒さよけはいらないか。
何か蛹になりやすい木の枝を鉢に刺した方がいいのか。無事に羽化してほしく、いろいろ調べています。
20年近く前の夏のこと。無農薬野菜に緑色の立派な青虫がついてきたことがありました。飼育箱に野菜の葉を入れ、木の枝も立てるようにして入れ、飼ったことがあります。
蛹になってからどのくらいの日数が経ったか忘れましたが、夜遅く、ガサゴソと音がして飼育箱を覗いてみると、蛹の裂け目から明るい浅葱色の羽が現れたのです。アオスジアゲハでした。
蛹から出て、新しい自分を確かめるようにしばらく羽を開いたり閉じたり。しばらくその様子を家族で眺め、飼育箱を開いて放しました。
アオスジアゲハは私たちのまわりをひらひらと回り、そしてゆらゆらと飛んでいきました。
浅葱色の紋様が月明かりの中でひらめいて。変容する命の不思議を味わった満月の夜でした。
蝶は蛹の中で体を溶かし、体を作り変えます。正確に言うと不必要な部分が溶け、それは体を作り変える栄養分となります。
あの小さな蛹の中で、大変なことが起こっているわけです。
違う姿に変容する。これは私たちにも起こることです。私たちは何度となく苦しい気持ちを味わい、困難な時期を迎えます。
どうにもならない気持ちをどうしていいかわからずに、悶々としてしまう。そんな真っ暗なトンネルを抜けるためには、心を成長させなければなりません。
意識を変える、古いやり方を手放す。新しい自分になる。それは思うよりも難儀なことです。
腹に落ちる、目から鱗が落ちる、という言葉の通り、頭でわかっているだけでは変われない。
蝶のように、じっと自分という蛹の中で、より成長した自分に作り変えていく、変容していく。一つずつ、いまできることから始めてみる。
自然は、偉大な先生です。自然が教えてくれることに耳を傾ける。目を見張る。心で学んでいく。
キアゲハの幼虫が無事に羽化するために何かできることはないか調べてみましたが、自然のままに、彼らのあるがままに。
小さな命の大きなドラマを見守ろうと思います。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」