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「あなたは生まれた瞬間から」 さくらももこの息子に、作家・吉本ばななが言葉を贈る

By - grape編集部  公開:  更新:

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出典:吉本ばななオフィシャルブログ

2018年11月16日に青山葬儀所で営まれた、漫画家・さくらももこさんをしのぶ『ありがとうの会』。

同年8月15日に、さくらももこさんは乳がんによって、53歳でこの世を旅立ちました。別れを惜しむため、会場に約1千人が集まりまったことが話題になっています。

友人である作家・吉本ばななさんも会に参列。ブログで追悼文を公開しました。

吉本ばななさんが、遺された人たちに伝えたいこと

「ももちゃんらしい晴れた空、いいお別れの会でした」という書き出しで始まるブログで、吉本さんは追悼文を誰のために書いたのかを最初に述べました。

この文章をだれに向けて書くべきなのか、迷いました。

ももちゃんにあてるのだろうか?と。

でも、ももちゃんには私の気持ちはもうすっかり伝わっていると思います。

だから遺された息子さん、ご家族の方たち、スタッフのみなさん、そしてももちゃんのファンのみなさんに向けて書くべきなのだと思い至りました。

なるべく短くしますので、しばらくだけ、耳を傾けてください。

吉本ばななオフィシャルブログ ーより引用

吉本さんによると、さくらももこさんと出会ったのは対談がきっかけだったとのこと。

一緒にスーパー銭湯へ行ったり、互いの実家へ行ったりするほど仲がよく、吉本さんの父親が亡くなった時、さくらももこさんはすぐに花を送ってくれたそうです。

『ママ友』の時に改めて感じた、さくらももこさんの人柄

また、互いに子どもが誕生した後は、息子さんたちを一緒に遊ばせていたそう。

子どもたちを通して、さくらももこさんの「人任せにしない性格」を改めて感じることができたと吉本さんは語っています。

そして、最後の数年は神様の計らいなのか、何回も会えましたし、かなり密にやりとりすることができました。

夜中まで飲んだり、しゃべったり、絵を見せてもらったり、変わらず小学生同士のように過ごしたけれど、いちばん違ったことはふたりの産んだ、もう大きくなった男の子が同じ部屋にいたことです。ふたりは若い頃の私たちと同じように、ゲームをしたり、お笑いの話をしたりしていました。

いつのまにかここまできたんだ、そして私たちはこれからもたまにこうして会えるんだ、そう思っていたのに。

その日は夜型のももちゃんに惜しまれながらも真夜中に帰ったのですが、うちの子がiPadを忘れてしまい、タクシーで引き返しました。

いつもはなんでもスタッフのうださんに「ミッちゃんやっといて〜」という、ぐうたらなももちゃんが、iPadを持って玄関の前までミッちゃんと息子さんといっしょに出てきてくれたのです。そういえばそういう人だった、と思いました。そういうところは人任せにしない人だったな、と。

闇の中で笑顔で立っているももちゃんは、白くてきれいで、変わってないなと思いました。あの日のままだなって。

吉本ばななオフィシャルブログ ーより引用

多くの人に伝えたい、漫画家・さくらももこさんの姿

そして吉本さんは、そばで見ていたからこそ知った、漫画家としてのさくらももこさんの姿を語りました。

ももちゃんの絵は、一見子どもの絵みたいなのであなどられがちですが、彼女はかけねなく天才でした。

ヨーロッパの香りがする独自の色彩感覚と、研ぎ澄まされた線。

彼女がカラー原稿を描くところを見ていると、確信を持って色をつけていて、まるで魔法のようでした。そしてすごいことに最後の最後まで、彼女はどんどん絵がうまくなっていきました。

ついさっきまでぐうたらしたりおしゃべりしたりゲラゲラ笑ったりしていた小猿みたいな彼女は、ペンを持つとすっと集中して、ほんとうに美しい大人の女性、絵の天才に変身するのです。

私は、その変身の瞬間を、もっともっと長い間見ることができると信じていました。

若いとき、いつも「かわいいけどちょっと意地悪なおばあさんになりたい、そのとき着る服まで考えてる、将来おばあさんになるのが楽しみだ」と言っていたのに。

ほんとうに残念です。淋しいです。

吉本ばななオフィシャルブログ ーより引用

「可愛いけど、ちょっと意地悪なおばあさん」という、さくらももこさんの『理想の姿』。吉本さんだけでなく、多くの人が見たかったことでしょう。

最後に吉本さんは、改めてさくらももこさんへの感謝の気持ちと、いままで支えてきた人たちへ宛てたメッセージをつづりました。

ももちゃん、さくらももこさん、私たちの時代に「ちびまる子ちゃん」を「コジコジ」を、そしてたくさんのすばらしい文章や絵を残してくれてありがとう。どこまでもクールでシュールで乾いた、ほんとうの笑いをありがとう。
あの偉大な才能を、これから引き継いで行く人たち、語り継いで行く人たちがいることを、願っています。
ももちゃんはほんとうに子どものような大きなエネルギーを死ぬまで持ち続けた人だったから、周りはたいへんだったと思います。そしてたいへんながらもそんなももちゃんといるのが最高に楽しかったと思います。私もそうでした。
ももちゃんがこの世のしがらみを超えて自由に描いた世界のあの偉大な創造性を、生きている限り、共に、ちゃんと伝えていきましょう。
遺されたご家族の方たち、スタッフのみなさん。どうかどうか元気で、幸せでいらしてください。特に息子さん、あなたは生まれた瞬間から、ももちゃんの全てでした。全身全霊であなたの健やかな人生を願っています。

そういうわけで、私たちは短い時間だったけど、あのすばらしい人と過ごせて、とても幸運だったのです。
それだけはかけねないほんとうのことなのです。
涙ではなく、笑顔で、彼女の偉大さを思い続けましょう。

ありがとうございました。

吉本ばななオフィシャルブログ ーより引用

あなたは生まれた瞬間から、ももちゃんの全てでした。

全身全霊であなたの健やかな人生を願っています。

吉本さんは特に力を込めて、さくらももこさんの息子さんに向けたメッセージを残しました。

大切な人を失った人の心は、時に悲しみにとらえられてしまいます。

けれど、吉本さんのいう通り、さくらももこさんのことを想う時は笑顔でいたいですね。


[文・構成/grape編集部]

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