「自分のために生きる」という実感を感じることの大切さ
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
記念日という人生の『踊り場』
作詞家デビューして35周年を迎えます。広告代理店に勤めて2年目、よくできたと思う歌詞10編を、サンミュージックのプロデューサーにプレゼンテーションしました。確か4月、いいお天気の日で、窓に面した明るい打ち合わせ室で、どきどきしながら作品を見せた日のことを今でもよく覚えています。その場で、当時の新人、桑田靖子さんのアルバムに2曲書くことが決まりました。
「人生は、パチンと指を鳴らす瞬間に変わる」
新しい扉が開いた瞬間でした。
「あっという間」という表現が陳腐に思えるほど、年月はあっという間に過ぎました。いいことも、わくわくしたことも、大変だったことも、悩んだこともたくさんありました。
30代の初め、トンネルの中を歩いているような先が見えなかった頃は時が過ぎていくのを重く感じたものでした。40代は子育てと仕事といろいろなことで嵐のように過ぎました。40代の頃の記憶が希薄なのは、なりふり構わず生きていたからなのかもしれません。
50歳になった時に、これまでしたことのないチャレンジをしようと、ライフアーティスト・アカデミーという小さなクラスを作りました。50代もまた、なりふり構わず過ごしていたのでしょうか、あっという間に50代最後の年を迎えました。
そう、人生は自分で思っている以上に短いのです。短命であるということではありません。時間の過ぎる速さは、想像を超えているということ。そして、ふと立ち止まった時に気づくものなのです。
これまで『周年』について特別に意識することはありませんでした。今この瞬間と、先を見て突っ走っていたのかもしれません。
今年、35年という年月をしみじみと感じるのは、これを区切りにまた次の扉を開いていきたい、と思いはじめている自分がいるからなのです。
人生の節目を感じる。立ち止まってみる。すると見えてくることがある。それが本当にやりたいことなのか、感謝の気持ちなのか、自分への承認なのかわかりません。
人生には、階段の小さな踊り場のような時が必要なのではないでしょうか。自分の人生、でも自分のためだけに生きることはなかなか叶いません。結果的に、家族や仕事のために生きたことも自分の成長につながるのですが、「自分のために生きる」という実感を感じることが、ある年齢から大切になるのです。
「あっという間に」振り返るたびにそう思うのでしょう。誕生日、結婚記念日、子供の誕生日、社会人になった日…、記念日は人生の小さな踊り場。
「あっという間に」立ち尽くしてしまわないように、自分の『今』を感じて、前を向いていきましょう。
※記事中の写真はすべてイメージ
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」