『大丈夫』という魔法 言葉で何も伝えることができない動物たちの言葉に耳を傾ける
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
『大丈夫』の魔法〜高齢のペットたちに
高齢犬の1週間は、人の1ヶ月に相当すると言います。1ヶ月で4ヶ月。3ヶ月で1年という計算になります。
それが病気を抱えていたら尚更のこと、目に見えて弱っていくのがわかります。そして、あるときを境にガタッと機能が落ちるのです。
15歳9ヶ月になる我が家のトイプードルのラニは1年半ほど前に腎臓の数値が高くなりました。週に一度点滴をするようになったのですが、いつもと変わらず元気に走り回ることができていました。
ところが半年前に膵炎を起こしたことをきっかけに体重が減少し始め、2.4kgが1.6kgに。背骨がくっきりと出て、お尻の骨の形が見えるほど痩せてしまいました。
ドイツの植物療法を取り入れた治療を始め、腎臓の数値も少し改善し、活力も出てきました。散歩に行きたがること。
ごはんを食べることが、ラニの生命力の表れです。そこに望みをつなぐように、過ごしてきました。
ところが、あるとき食べなくなり、外を歩くこともままならなくなりました。外に出たがるのですが、10メートルも歩くと止まってしまいます。
その後はキャリーカートに乗せて散歩をします。風に吹かれながら気持ちよさそうにしている背中を見ていると、この地球の美しさを楽しんでいるような、目に焼き付けようとしているような……そんな感じがします。
我が子のように慈しんできたペットたちは、いつか飼い主の年齢を超えていきます。それはいずれ私たちも辿る道です。
彼らは生きるということを、身をもって示してくれている。高齢になったペットたちはおそらく、食べたいのに食べられなくなること、歩きたいのに歩けなくなること、目が見えなくなることなど、多くのことに不安を感じているでしょう。
それは、飼い主たちが彼らを失う不安よりも大きいはずです。それを受け入れて命のままに生きる。私は改めて生きることの尊さを思うのです。
言葉で何も伝えることができない動物たちの言葉に耳を傾ける。
(ただそばにいてほしい)
私はそんな言葉を丸まって寝ているラニを見ていて伝わってくる思いがありました。そして、大切なラニを失うことの怖れを『大丈夫』という言葉に変えて伝えていこうと思うのです。
何があっても大丈夫、大丈夫。思いを込めたことの言葉が、ラニの不安の慰めになりますよう祈ります。大丈夫は魔法の言葉のようです。
この言葉は、何よりも私の怖れを慈しむ気持ちに導いてくれるのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」