【『オールドルーキー』第1話感想】37歳、人生の挫折と向き合う綾野剛 表情豊かな演技に視聴者も感情移入
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ドラマ好きなイラストレーター、ゆう。(@yamapyou)さんによるドラマコラム。
2022年6月スタートのテレビドラマ『オールドルーキー』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。
今活躍している人も、現役でバリバリ働いている人も、その終わりがいつ来るかなんてわからない。
自分はまだいける!
そう思っていたとしても世間の評価は無惨にも異なる場合がある。
もし明日、チームが解散になったら?会社をクビになったら?
私たちは現実と向き合うことはできるだろうか。プライドを捨てて新しい人生を歩むことはできるだろうか。
2022年6月26日より、綾野剛主演の日曜劇場『オールドルーキー』(TBS系)がスタートした。
人生はいつだってやり直せる。
まさに人生の教科書になってくれそうな新たなドラマの誕生である。
『オールドルーキー』の主人公は綾野剛演じる、元サッカー日本代表の新町亮太郎。
いわゆるサッカー選手としての全盛期はとっくに過ぎてしまっているものの、また日本代表へ返り咲こうと闘志を燃やしていた。
周囲から「それは厳しいでしょ」と向けられる視線にも気づいていない、ちょっぴり痛めな主人公である。
ある日、所属していたチーム「ジェンマ八王子」が突然、経営難で解散することになった。
同僚は他チームに移籍する中、新町は年齢のハードルもあり、いっこうに移籍先が見つからない。
そこで、移籍先を見つけてもらうため、スポーツ選手のマネジメントを行う会社ビクトリーと出会う。
しかし、現実はそう甘くなかった。結局、移籍先は見つからず、そのまま『現役引退』を余儀なくされたのである。
住宅ローンや幼い娘2人の教育費など、これから大事だという時に無職になる不安は考えただけでも恐ろしい。妻が頭を抱えるのも当然だ。
新町の全盛期、J1にいた頃の年俸は5000万以上。
よく「生活の質は簡単に下げられない」というが、新町は、まさにソレだった。
J3のジェンマ八王子に移籍してから年収は400万円台になったにも関わらず、妻には「またJ1に返り咲いてやる」と言いながら高級車や時計など浪費を繰り返していたのだ。
それなのに、いざ、叩きつけられた引退という現実。
これまでサッカーしかやってきていなかった新町は、もちろんパソコン操作やサラリーマンのような営業もできない。
転職活動は上手くいかなかった。世間はそう甘くない。そう主人公が身を呈して教えてくれたのだが、ドラマとはいえ、初回から目をそむけたくなるような残酷なスタートである。
これまでスポーツや仕事などで大きな挫折の経験がある人は共感できる部分が多かったのではないだろうか。
綾野剛の表情豊かな演技に視聴者も感情移入!
数々のドラマを視聴してきたが、ここまで陰と陽のキャラクターを上手く使いこなす俳優は他に出てこない。
最近だと『アバランチ』『MIU404』『恋はDeepに』『コウノドリ』など、どれも違った綾野剛を楽しむことができた。
声のトーンが高く、ヘラヘラとした様子で喋るのも綾野剛であり、ドスの効いた声に鋭い目つきで睨むのも、微笑みながら包み込むような優しさを見せる姿も綾野剛なのである。
ここまで対照的なキャラクターを演じ分けながら、どちらを見ても「綾野剛だ!」と認識させられることに感心する。
そして本作の綾野剛は陽の印象が強い。
いつもニコニコとしていて、よく喋り、周囲を明るくするタイプだ。サッカー選手というみんなの憧れであるからこそ、キラキラとした弾ける笑顔が似合う。
初回では、そんなキャラクターが世間の厳しさを目の当たりにし、徐々にプライドがボロボロになっていく姿を綾野剛ならではのキャラクターで演じて魅せた。
悲しみを笑顔で取り繕っている感じも繊細に表現されている。
本当は辛いけど笑うしかないんだろうな。
そう感じさせられる表情を見ることで、こちらも自然と感情移入されてしまうのである。
また、涙のシーンはさらに箔が付く。
日雇いの交通整理の仕事をしながら、虚しくなった新町が「俺、何やってんだ…」と、涙ぐむ姿には多くの視聴者が胸を締め付けられたのではないだろうか。
幅広い表情を見せてくれる綾野剛の演技が今後も楽しみだ。
個性豊かなレギュラーメンバーも見どころ!
社長の厚意もあり、ビクトリーで働くことになった新町だが、そこには愉快なキャラクターも数多く登場。
バリバリ仕事ができる若手のホープ・塔子(芳根京子)は、初回から新町の教育係として奮闘。
ゲストである、横浜流星演じるサッカー選手との商談シーンも、凛として応じる姿は非常に魅力的であった。
また塔子と同様に成績優秀で社長にも買われている梅屋敷(増田貴久)。仕事ができると自覚しているが故に鼻につく態度が個性的で可愛らしい。
最近ドラマに引っ張りだこな増田貴久の演技も見どころである。
第二の人生を再スタートさせる主人公が仲間と共にこれからどう成長してくのか、夏ドラマにふさわしい、熱いパワーをもらえる作品になりそうだ。
[文・構成/grape編集部]