国内初の『経口中絶薬』費用が議論 「高すぎる!」「慎重にすべき」
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生命の誕生は尊く、喜ばしいものとされています。しかし、中にはさまざまな事情で中絶を選択する人もいるのです。
厚生労働省によると、令和2年度の人工妊娠中絶手術数は、14万5千件以上。うち、20歳未満の手術は1万件を超えるのだとか。
2023年4月現在、日本では中絶を行う場合、主に掻爬(そうは)法と真空吸引法、電動吸引法という3種の人工妊娠中絶手術が行われています。
もっとも一般的な掻爬法は、金属の器具で子宮内容物を掻き出すというもの。吸引法と併用して身体への負担を軽減する場合もありますが、精神的な負担は大きいといいます。
そんな中、近年注目が集まっているのが、人工中絶のための飲み薬(通称:経口中絶薬)。日本では、ネットを中心に導入を求める運動が行われてきました。
『経口中絶薬』の費用にネットで賛否の声
同年2月、厚生労働省による経口中絶薬『メフィーゴパック』についての意見公募(パブリックコメント)が行われ、約1万2千件という想定以上の意見が寄せられました。
集まった意見を分析し、専門家が議論を重ねた結果、同年4月21日、厚生労働省の薬事分科会は製造販売の承認を了承。産経ニュースによると、1か月以内の承認を目指しているとのことです。
了承された『メフィーゴパック』は、妊娠継続に必要なホルモンの働きを抑えるもの。妊娠9週以下の人が対象であり、治験では服用後24時間以内に93%の中絶が確認されています。
当面は、安全に薬を使用するため、服用者の中絶が確認されるまで病院での待機が必須に。また、製薬会社と医療機関が都道府県医師会に報告を行うなど、管理を徹底する方針とのことです。
国内初の経口中絶薬が承認されることになり、ネットではパブリックコメントを寄せた人を中心に、喜ぶ声が続出。しかし、ある1点が議論を呼んでいます。
経口中絶薬の費用が10万円ほどに
議論になっているのは、経口中絶薬を使う際の費用。原則、保険適用外となる見込みであり、薬価5万円に診察料などを加えて10万円ほどになると予想されています。
前述したように、中絶にはさまざまな事情があります。10代未満の中絶経験者も多いため、経済的な事情で決断を下した人もいるでしょう。
費用が10万円という、現在の初期中絶手術とさして変わらない金額に、ネットからは「あまりにも高すぎるのではないか」という意見が上がっています。
【肯定的な声】
・最初は慎重に導入すべきだと思う。今後、状況に合わせて変更していくのはどうか。
・経口中絶薬が安価で手に入れられる状況は、正直いうと不安がある。副作用も軽くないし、気軽に服用できるのは危険ではないか。
・困っている人の選択肢が増えるのはいいことだけど、保険適用や公費負担で安価にするのは賛成できない。
【否定的な声】
・この価格では、経済的に苦しい人を救うことができない。トイレで産み落とす事件も少なくないのに。
・避妊は100%ではない。避妊に失敗した若い人は、これまで通りに苦しむしかないのか?
・海外にはもっと安価で処方してもらえる国があるので、日本も保険適用や公費負担を進めていってほしい。
世界保健機関(通称:WHO)は、経口中絶薬を妊娠初期の安全な中絶方法として推奨。日本で主流の掻爬法に対しては、子宮を傷付ける恐れがあるとして「時代遅れである」と指摘しています。
少子高齢化が深刻な社会問題になっている現代日本ですが、多くの人が、母子の安全と幸せが尊重された社会を求めているでしょう。
経口中絶薬の承認は、安心して妊娠・出産できる社会への第1歩。今後、さまざまな意見を取り入れた上で、議論が進むことを祈るばかりです。
そして、予期せぬ妊娠そのものを減らすことも大切。身体の仕組みそのものだけでなく、人権についても学ぶ『包括(ほうかつ)的性教育』が社会全体に広まるといいですね。
[文・構成/grape編集部]