平原綾香『Jupiter』の歌詞に秘めた想い 人の『つながり』を見つめ直す理由
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
つながっている私たち
私たちが誕生するまでに、先祖を10代遡れば2,046人、20代遡ると2,907,150人とある資料に書いてありました。
20代前というと安土桃山時代あたり。40代前、飛鳥時代あたりになると、2兆人を超える計算になります。気の遠くなりそうな数のご先祖の命の連なりの最先端に、いま私たちは立っています。
それぞれの人にこれだけの数のご先祖がいるわけですから、今日、道ですれ違った人とどこかでつながっている可能性もあるわけです。いくつかの人種の遺伝子も混ざっているかもしれません。
数えきれない一人一人に、人生の物語があったはずです。「いま」のこと、自分のことで精一杯だったりするのですが、苦難を超えて命をつないでくれた人たちに思いを馳せてみると、ありがたく、その尊さに頭が下がります。
国どうしで戦うことも、民族が敵対することも、実に愚かしいことです。もちろん、社会の中で、人間関係の中で争い、憎み合うことも。もしかしたら共通のルーツを持つかもしれないのですから。争いも憎み合いも避けることはできないのかもしれません。
でも、もうそんなところに留まっている時代ではないかもしれません。科学は進歩しても、人間の心は進化できないままのような気がしてなりません。
アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、南北アメリカ、オーストラリアの若者が集まり、それぞれ遺伝子検査をするという番組がありました。最後に結果が伝えられるまで、互いに主張を戦わせます。険悪なムードも漂います。
遺伝子検査の結果は驚くべきものでした。ほとんどの人たちが、多種多様の民族の遺伝子を持っていたのです。そのとき、若者たちの意識に変容が起こります。他人とは思えなくなってくる。それまでお互いの主張を譲らなかった人たちの表情が和らぎ、涙を浮かべながら抱き合います。
この光景を目にしたとき、人間の本質は善なるものなのだと思いました。私はあなたの一部であり、あなたは私の一部。自分たちが同じルーツから分かれてきたことを知れば、解決できることが多くあると思います。
「深い胸の奥でつながっている」
平原綾香さんが歌った『Jupiter』のフレーズです。私が最も伝えたかったことを、このフレーズが語っています。
私たちは決してばらばらの存在ではなく、どこかでつながり合っている。それを目に見ることはできないかもしれませんが、いにしえから続いている命の旅路に想像を広げてみると、世界は変わるかもしれない。
振り上げた拳を一度見つめてみる。半分夢のようなことかもしれませんが、世界はいま、意識の変容のタイミングを試されているのかもしれません。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」