玄関先に舞った白い花びらはどこから?風が知らせる春の便り

By - 吉元由美  公開:  更新:

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吉元由美

作詞家、作家。作詞家として1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛けた。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

春遠からじ〜轟々と風のたより

轟々と風が鳴っています。

この冬は唸るような強い風が吹く日が多く、体感温度は一気に下がります。

こんな日の夕方に外にいると心細さがつのり、家路を急ぐのです。

風が強い日の朝、玄関の前に白い花びらが何枚か落ちていました。

サザンカの花びらでしょうか。

サザンカの花の写真

すぐ隣にも、お向かいのお家にもサザンカはありません。

ご近所を見まわしても、白いサザンカが咲いている家はないのです。

どこか離れたお家の庭から飛んできたのでしょう。

これこそ季節の流れを伝える『風のたより』、冬の花であるサザンカが散り始めたことを知らせているのでした。

もう1月も半ば過ぎ、もうすぐ立春を迎えます。

『風のたより』、情緒的で美しい言葉です。

どこからともなく耳に入ってきた話、うわさのこと。古の人々は『風の便り』と名づけました。

白波のあとなき方に行く舟も

風ぞたよりのしるべなりける 藤原勝臣

(どこを目指して行けばよいのか、行方も知れぬ恋にとっては、風のたよりだけが頼りになる導き手なのだ)

すゞしやと風のたよりを尋ぬればしげみになびく野べのさゆりば 式子内親王

(風が便りのように運んでくる花の香。ああ涼しいとその香のもとを辿ってゆくと、その風に揺れながら茂みのなかに咲く野原の百合の花に巡り合ったのだった)

風が運ぶ花の香りからインスパイアされた一瞬を歌に詠む。

恋焦がれる人の消息を風のたよりと例える。

その感性から生まれた言葉が、いまも生きているのです。

女性の写真

風は季節の移り変わりを運んでくる。香りを乗せて、温もりや冷たさを乗せて。

そして遠く離れた人の近況も運んでくる。こうして日常の中でふと心に留まった言葉を紐解いてみると、ささやかな豊かな時間を味わえるのです。

『風のたより』を英語ではどのように表現するのか調べてみました。

Alittlebirdtoldme.

Hearthroughthegrapevine.

Hearditonthewind.

たよりは小鳥がささやくように教えてくれる。

ブドウの蔓が絡まるように、いろいろな人を介して伝えられる。

言葉が持っている文化的背景を知ると、また興味深いですね。

梅の花の写真

轟々と風が鳴っている午後、外に出てみると梅の花びらを数枚、玄関先に舞っていました。

どこからか届けられた春の訪れを告げるたより。

厳しい寒さの向こう側に春を感じたマイナス1℃の午後でした。

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※記事中の写真はすべてイメージ


[文/吉元由美 構成/grape編集部]

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