「他人を論破しようとする時、あなたの顔は…」 SNSで投げた言葉、面と向かって伝えられますか? By - 吉元 由美 公開:2018-04-07 更新:2018-04-07 吉元由美連載 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 バーチャルな社交の場であるSNSの世界で 「社交の場で、政治と宗教の話をしてはなりません」 外交官夫人であり、アートフラワー、西洋料理の先駆者である飯田深雪さんのマナーの本にあった言葉です。 この言葉に出合ったのは45年ほど前、小学5年生くらいだったと思います。母が読んでいたこの本を、何度読んだことか。外国といえばTVの『兼高かおる世界の旅』の時代でしたから、飯田深雪さんの外交官夫人としてのライフスタイルは憧れでした。その中でも、この社交のルールは無用な対立、議論を避けるためのマナーです。イデオロギーの違いは、時に不毛な議論を巻き起こします。 SNSの場も、バーチャルな社交の場です。面識のないもの同士がつながり、メッセージ、チャットなどでコミュニケーションをとる。有名人ともつながることが可能なのは、Facebook、Twitter、ブログなどです。人と人が出会い、つながる。そのハードルが下がった分だけ会ったことのない人とつながります。 そこには気軽さがある分、お互いを尊重する気持ちを持つことが大切だと痛感します。そして、政治と宗教の話も不毛な議論やヘイトスピーチを誘発するような投稿はどうなのだろうと思います。 SNSは交流する場であり、自分の意見を世界発信できる場でもあります。生の声ですから、それが多く集まればマジョリティの動きとなって、何かを起こせる可能性もあります。もしかしたら、変革も起こせるかもしれないのです。そのような可能性を持ったSNSであるなら、社会に対する鬱憤(うっぷん)を罵詈雑言(ばりぞうごん)で吐き出すのではなく、論理性を持って発信していけば、共感の輪が広がっていくかもしれないのです。 社会で何か問題が起こった時、FacebookやTwitterに怒り、憎悪、嫉妬、嫌みのような言葉が飛び交います。会ったことのある人にも、そんな言葉を投げつけることはできるのでしょうか。面と向かって、いえるのでしょうか。このようなエネルギーから生まれる世界はどんな世界なのでしょう? そんな中、作家の高橋源一郎さんがTwitterでつぶやいた言葉が静かに流れてきました。 「この前、ある人から『高橋ゼミの方針はなんですか?』ときかれました。1つあるとしたら、『論破禁止』ですね。だって、誰かを論破しようとしている時の人間の顔つきは、自分の正しさに酔っているようで、すごく卑しい感じがするから。そうならないようにです。もちろん、これは自戒としていうのだけど」 高橋源一郎さんTwitter (@takagengen) ーより引用 こうして、書いている私も論破しようとしているのかもしれませんね。これを論破にしないためには、淡々と、真摯に自分の考えを深め、敬意をもって伝えていくことでしょうか。 言葉を深めていく。読む、話す、聞く、書く、伝える。その細部に『自分』が宿っていることを、改めて心したいと思います。遠い日に憧れとともに読んだマナーの本。時を超えて変わらない美しさから、まだまだ学ぶことがたくさんありそうです。 作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 ダルビッシュ有が日本に帰国 向かった先は…?2024年11月12日、メジャーリーグの『サンディエゴ・パドレス』に所属するダルビッシュ有選手が、自身のブログを更新。日本に一時帰国していたことを明かしました。 俳優・火野正平さんが逝去 腰痛の治療に励むも腰部骨折に火野正平さんが亡くなったことが分かりました。ご冥福をお祈りいたします。 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
バーチャルな社交の場であるSNSの世界で
「社交の場で、政治と宗教の話をしてはなりません」
外交官夫人であり、アートフラワー、西洋料理の先駆者である飯田深雪さんのマナーの本にあった言葉です。
この言葉に出合ったのは45年ほど前、小学5年生くらいだったと思います。母が読んでいたこの本を、何度読んだことか。外国といえばTVの『兼高かおる世界の旅』の時代でしたから、飯田深雪さんの外交官夫人としてのライフスタイルは憧れでした。その中でも、この社交のルールは無用な対立、議論を避けるためのマナーです。イデオロギーの違いは、時に不毛な議論を巻き起こします。
SNSの場も、バーチャルな社交の場です。面識のないもの同士がつながり、メッセージ、チャットなどでコミュニケーションをとる。有名人ともつながることが可能なのは、Facebook、Twitter、ブログなどです。人と人が出会い、つながる。そのハードルが下がった分だけ会ったことのない人とつながります。
そこには気軽さがある分、お互いを尊重する気持ちを持つことが大切だと痛感します。そして、政治と宗教の話も不毛な議論やヘイトスピーチを誘発するような投稿はどうなのだろうと思います。
SNSは交流する場であり、自分の意見を世界発信できる場でもあります。生の声ですから、それが多く集まればマジョリティの動きとなって、何かを起こせる可能性もあります。もしかしたら、変革も起こせるかもしれないのです。そのような可能性を持ったSNSであるなら、社会に対する鬱憤を罵詈雑言で吐き出すのではなく、論理性を持って発信していけば、共感の輪が広がっていくかもしれないのです。
社会で何か問題が起こった時、FacebookやTwitterに怒り、憎悪、嫉妬、嫌みのような言葉が飛び交います。会ったことのある人にも、そんな言葉を投げつけることはできるのでしょうか。面と向かって、いえるのでしょうか。このようなエネルギーから生まれる世界はどんな世界なのでしょう?
そんな中、作家の高橋源一郎さんがTwitterでつぶやいた言葉が静かに流れてきました。
こうして、書いている私も論破しようとしているのかもしれませんね。これを論破にしないためには、淡々と、真摯に自分の考えを深め、敬意をもって伝えていくことでしょうか。
言葉を深めていく。読む、話す、聞く、書く、伝える。その細部に『自分』が宿っていることを、改めて心したいと思います。遠い日に憧れとともに読んだマナーの本。時を超えて変わらない美しさから、まだまだ学ぶことがたくさんありそうです。
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」