「他人を論破しようとする時、あなたの顔は…」 SNSで投げた言葉、面と向かって伝えられますか?
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
バーチャルな社交の場であるSNSの世界で
「社交の場で、政治と宗教の話をしてはなりません」
外交官夫人であり、アートフラワー、西洋料理の先駆者である飯田深雪さんのマナーの本にあった言葉です。
この言葉に出合ったのは45年ほど前、小学5年生くらいだったと思います。母が読んでいたこの本を、何度読んだことか。外国といえばTVの『兼高かおる世界の旅』の時代でしたから、飯田深雪さんの外交官夫人としてのライフスタイルは憧れでした。その中でも、この社交のルールは無用な対立、議論を避けるためのマナーです。イデオロギーの違いは、時に不毛な議論を巻き起こします。
SNSの場も、バーチャルな社交の場です。面識のないもの同士がつながり、メッセージ、チャットなどでコミュニケーションをとる。有名人ともつながることが可能なのは、Facebook、Twitter、ブログなどです。人と人が出会い、つながる。そのハードルが下がった分だけ会ったことのない人とつながります。
そこには気軽さがある分、お互いを尊重する気持ちを持つことが大切だと痛感します。そして、政治と宗教の話も不毛な議論やヘイトスピーチを誘発するような投稿はどうなのだろうと思います。
SNSは交流する場であり、自分の意見を世界発信できる場でもあります。生の声ですから、それが多く集まればマジョリティの動きとなって、何かを起こせる可能性もあります。もしかしたら、変革も起こせるかもしれないのです。そのような可能性を持ったSNSであるなら、社会に対する鬱憤を罵詈雑言で吐き出すのではなく、論理性を持って発信していけば、共感の輪が広がっていくかもしれないのです。
社会で何か問題が起こった時、FacebookやTwitterに怒り、憎悪、嫉妬、嫌みのような言葉が飛び交います。会ったことのある人にも、そんな言葉を投げつけることはできるのでしょうか。面と向かって、いえるのでしょうか。このようなエネルギーから生まれる世界はどんな世界なのでしょう?
そんな中、作家の高橋源一郎さんがTwitterでつぶやいた言葉が静かに流れてきました。
こうして、書いている私も論破しようとしているのかもしれませんね。これを論破にしないためには、淡々と、真摯に自分の考えを深め、敬意をもって伝えていくことでしょうか。
言葉を深めていく。読む、話す、聞く、書く、伝える。その細部に『自分』が宿っていることを、改めて心したいと思います。遠い日に憧れとともに読んだマナーの本。時を超えて変わらない美しさから、まだまだ学ぶことがたくさんありそうです。
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」