失ってはならない日本の精神 日頃の何気ない言葉や行動の中に精神、心が現れる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
言葉と行動は『心の現れ』
先日、ロサンゼルス・エンジェルズの大谷翔平選手が会見後に席を立ち、椅子をきちんと元に戻している動画をツイッターで見ました。
大谷選手のこの行動について、アメリカ人が感心した、とのツイートが多く寄せられているそうです。
何ということのない、ただ椅子を元の向きに戻したということ。でもここには『精神』『心』があります。それは相手(椅子を片付ける人)への心遣いであり、立つ鳥跡を濁さず、の精神です。
ゴルフの松山英樹選手がマスターズで優勝した時、キャディの早藤さんがグリーンに向かって一礼した写真も話題になりました。
サッカー選手も選手交代などのとき、ピッチに一礼します。誰に教えられることもなく、多くの日本人はこのようなことを無意識のうちにします。
日本らしさ、日本人らしさとは?日本のいいところは?こんな質問を時々受けます。食べ物がおいしいとか、インフラが整っている、電車の時間が正確、女性が夜にひとり歩きしても比較的安全、落とし物は返ってくる……とよく言われます。
でもそれだけでは表現しきれない何か……それは、『精神』『心』なのだと思います。目に見えない何ものかに対する敬意、それが私たちの中に無意識のうちにあるのだと思います。
友人がゴルフ場の化粧室で石川遼選手と一緒になったときのこと。石川選手は手を洗った後、洗面台をペーパータオルで丁寧に拭いて出たそうです。これは、なかなかできることではないですね。
次に使う人への心遣いが、自然にこのような行動になるのです。教えられなくても、強制されなくても、自然に行う、そこに美しさがあります。
目に見えないものを大切にする。日本語にある敬語、謙譲語、丁寧語は、相手に対する敬意の表れです。
相手を大切に思うからこそ、自然に出る言葉です。過剰な敬語や謙譲語は聞き苦しいですが、日常の会話の中に自然と溶け込んでいると素敵です。言葉だけでなく、その心が身についている、ということですから。
例えば、「誰々さんが来た」を「誰々さんがいらした」と言うだけで、そこに小さな美しさが現れます。「何々をもらった」と「何々をいただいた」と言うと、感謝の気持ちが現れます。
言葉も行動も『現れ』です。日頃の何気ない言葉や行動の中に精神、心が現れる。大谷選手の椅子を丁寧に直す姿は、失ってはならない日本の精神を改めて教えてくれました。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」