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桜花爛漫の季節 何故、桜はこんなに人の心をとらえるのか

By - 押阪 忍  公開:  更新:

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こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。

ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。

サクラ、さくら、桜の季節です

桜花爛漫の季節です。桜の美しさ、華やかさについては、古今東西、多くの文人墨客ぼっかくが表現していますが、この桜の季節になると、当方はいつも、歌聖といわれた西行法師と、明治の小説家、梶井基次郎を思い出します。

西行法師は、こよなく桜を愛し有名な和歌「ねがわくは、花の下にて春死なん、そのきさらぎのもち月の頃」と詠んでいます。

そして釈迦入滅のその日、「2月16日」、望み通りに亡くなったと言われています。桜花の美しさを死と結びつける西行の和歌、桜には 生と死が共有されるのかもしれませんね。

花が散り青葉が出て、晩秋11月には その葉も全て枯れ落ち、茶褐色の木肌のまま越冬し、春の蕾を待つ桜の木、古色蒼然とした老木にさえ見える茶褐色の枝木が、春になると突然の如く、絢爛けんらん豪華な花木に変るのです。

何故、桜はこんなに美しく人の心をとらえるのか…。

明治の小説家、梶井基次郎は、その短編小説で、「桜の木の下には死体が埋っている」。そんな表現さえしています。

当方、暗闇で、夜桜の妖艶な美しさを見ると、その表現を思い出すことがあります。

桜は咲く時よりも「散り際が美しい」とよく言います。かつての武士は、好んでその表現を使ったようですね。

当方は伊豆の山中で、咲き競った満開の山桜が一陣の風に 右から左へハラハラと舞い散って行く光景を、暫く見つめていた事を思い出しますが、それは、何とも例えようがない究極の美しさでありました。

桜は国花、国の花です。この季節、まだコロナ禍ではありますが、1人1人が感染に注意しつつ、大いに桜花をでて、日本人の喜びや楽しみを共有したいと願っております。

<2021年3月>

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フリーアナウンサー 押阪 忍

1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。

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