「言葉に心をこめる」というテーマは、生き方の美しさにつながっている
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
言葉と心との隙間に気づいてみると
「幸せを祈っているよ」
こう言った人は、本当にこの言葉の通りに相手の幸せを祈っているのだろうか。
かつてティーンネイジャーのバイブルとも言われたJ.D.サリンジャーの小説『ライ麦畑でつかまえて』の主人公ホールデンは、行く先々で言われるこの言葉に悩みます。
挨拶のような、単なる常套句のような言葉に、彼は嘘、インチキの匂いを感じとります。彼は純粋であろうとするあまり、『善意の衣を纏った嘘くささ』に落胆するのです。
ここがこの小説の肝となる部分。私も10代の頃、本音と実際に口にするそんな言葉の不一致にインチキ臭さを感じたものでした。
他人に言われた言葉に対してではなく、自分の言葉と本音との隙間もどうしていいかわからなかった。
この年齢になればそんな隙間と折り合いをつけられるようになりましたが、10代の頃はきつかったことを憶えています。
「退屈な大人になるなら、馬鹿なままの子どもでいい」
そんなことも思ったものでした。流されるように社会の歯車の一つになり、本当の気持ちから離れていくような大人のなり方を拒否したかったのです。
誰かが亡くなるとSNS上にはお悔やみの言葉が溢れます。それが犬であろうと猫であろうと人であろうと、「心からお悔やみ申し上げます」「ご冥福をお祈りします」という弔意の言葉が並びます。
誰かの訃報を、お悔やみの言葉の常套句、定型文で済ます。そこでふと思うのです。本当に祈っているだろうか。心からのお悔やみの気持ちを感じているのだろうか。
親友が亡くなったとき、Facebook上に多くの人が弔意の言葉を寄せました。でも私は、とても「ご冥福を……」とは言えませんでした。
悲しいとか悔しいという言葉では表せない、心に空いた喪失感という穴をうまく表すことができませんでした。
大きな悲しみに遭遇したとき、私たちは言葉を失うのです。そして悲しみの中にいる人にかける言葉も見つからない。
そこを埋めるような言葉には、『嘘』や『体裁』はいらない、と思うのです。
6月に15歳の愛犬を亡くした夜、受講生がお花を持って来てくれました。そして、
「私は由美先生が心配」
と、そっと抱きしめてくれました。どんな弔意を表す言葉よりも、心にしみ、慰められました。
『ライ麦畑でつかまえて』を初めて読んだ時から半世紀近くなります。「言葉に心をこめる」というテーマは、生き方の美しさにつながっているのだとわかるようになりました。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」