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「おかーは俺を殴らなかったの?」DVを受けた母へ質問 その答えに息子は涙が止まらなくなった【grape Award 2017】

By - grape編集部  公開:  更新:

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母がくれたプレゼントは、僕にとって”心の救急箱”となった

「しょうご(僕の名前)は中学生の頃、『おれの視界から消えろ』、『おめーなんて死んでしまえ』、『なんでおめーが親なんじゃ』って言ってたんだよー。」と笑いながら、母は僕に言った。

大学進学を機に、離れ離れになった母とがらんとした居酒屋で呑んでいた時の話。
昔話に火がつき、僕と母のげらげらと笑う声が居酒屋に響き渡る。

ふとした時に母からこぼれたその言葉に、僕は多感だった小中学生の頃を思い出した。

その頃の母は、父のきつい“言葉”と“力”という大雨をあびせられる日々だった。いわゆる、DVというものだ。

母は高校1年生の時、親の離婚を機に、故郷名古屋から、三重県の田舎に引っ越す。

引っ越してからの母は、親(僕のおばあちゃん)を助けるために、高校を中退し、水商売でお金を稼ぐ毎日。
必死に働くうちに、友人との縁も切れていき、母は三重県で「一人で強く生きる」と決め、仕事に没頭したそうだ。

父や僕から追い込まれた時、母の相談する相手は自分一人のみ。
相談できる相手もいない、“ひとり”という状況はどれだけ苦しかっただろう…自分が母と同じ境遇だったらと想像するだけで“ぞっと”する。

僕は「なんてことをしてしまっていたんだ。」と本当に母に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

当時の僕は、母が暴力をふるわれているのを見たり、父と母がけんかする姿を見たりと家に帰りたくなかった。だから、母に八つ当たりしていたのかもしれない。

そうやって考えていると、僕は大学の講義での話を思い出した。
DVを受けている母親は、自身の子どもに手を上げてしまう人もいると聞いたことを。

「おかーはどうだったのか」と気になった。

子どもに手をだしてしまうことは誰も良いこととは言わないだろう。
でも、手を出してしまう人が完全に悪人とも思えない。

いつの間にか、僕は母に問いかけていた。

「おかー。」

「ん?」

「おかーは、おれを殴ったりしなかったの?
おかーのあの頃の状況を考えると、追い詰められて殴ってもおかしくないと思うんやけど。」

「しょうご。ばかか!そんなことあるわけないやろ!
どんだけ辛くても、大切な子に手を挙げることなんて絶対したらあかん!」

なんのちゅうちょもなく母はそう答えた。

その母の力強い"言葉"に僕のなかの"何か"が崩れ落ちた。
涙がとまらなくなってしまった。

「あのころは、本当にごめんな。いろいろおかーにひどいことしてしまって。」

「しょうご。お母さんはな。大事なしょうごを当たり前のように育てただけ。
なんもひどいことされたなんて思ってへんよ。子の成長を見守るのが母の務めや!
ぎゃくに、こんなだめなお母さんを大事にしてくれてありがとうね。」

母の懐の深さに、僕はもーなにもいえなくなってしまった。

母に、一生かかってもいいから、恩返しをしていこうと改めておもった。

"親"も一人の人間。
間違ってしまう時だってある。
どうしていいか分からない時もある。

でも、
子を愛する母親の想いは、本当にすごい。

こんなにも、すごいことがこの世の中にあるんだと実感した。僕は母に、「”無償の愛”があるんじゃないか」と思わせてもらった。

いろいろ生活していると辛いこと、苦しいことがある。でも、”生きる”ってのもわるくないなと思えた。

母という、心の支えがあり、僕はどん底生活から一転して、“先生になって、ネガティブな感情をいだく、子の力になりたい”という夢を追いかけ、前を見て生きている。

母が僕にくれた“愛”というプレゼントを、自分の大切な人にわたしていく生き方をしようと決めた。

母がくれた“愛”というプレゼントは、僕にとって心の救急箱となった。

「おかー…。ほんまにありがとうな。」

「感謝されることでもないよ!そんなくだらん話はええから、うまいお酒のも!久々なんやからさ♪」


grape Award 2017 応募作より
『母がくれたプレゼントは、僕にとって”心の救急箱”となった』
氏名:南翔伍

『心に響く』エッセイコンテスト『grape Award』

grapeでは2017年、エッセイコンテスト『grape Award 2017』を開催し、246本の作品が集まりました。

2018年も『grape Award 2018』として、『心に響く』をテーマにエッセイを募集しています。詳細は下記ページよりご確認ください。


[構成/grape編集部]

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