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クリスマスが近くなると思い出すこと 自分のこの両手で何ができるのか

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

私のこの両手で何ができる?〜クリスマスに思うこと〜

12月、クリスマスが近くなると思い出すことがあります。娘が小学校2年生の頃、16年前のある日、学校から帰ってくるなり娘が言いました。

「パパの古い靴下ある?」

話を聞いてみると、学校の帰り、駅にホームレスのおじさんがベンチで寝ていたそうです。そのおじさんはいつもそこにいて、寒いのに裸足だった。

パパの靴下をあげてもいい? と。寒そうにしているのに、誰も何もしない。どうして助けないの? 娘なりの憤りを感じているようでした。

靴下を集めるためのチラシを作って、駅で配ろうかな。自分にできることは何か、考えをめぐらせていました。

日々の生活の中に、考えるきっかけになることがたくさんあります。大人は面倒なことであればスルーすることができ、なかったことにしてしまうこともできます。

でも、その寒そうなホームレスのおじさんを見てしまったことを、子どもはスルーすることはできません。社会の中での正義感が芽生えた出来事だったのだと思います。

その正義感をつぶさないように、いい方向へ持っていくにはどうしたらいいのか。助けたい!という気持ちを尊重しつつ、「何かをあげることはその時は助かるけれど、根本的な解決にはならないのではないか」ということを話しました。その上で、できることを考えよう、と。

子育てにおいて、子どもに与えられたテーマは、同時に親の力量が試されるテーマです。

受容する力、忍耐力、クリエイティビティを同時に発揮しなければならない。生きる力を与え、培っていくための、時には水先案内人になる……まさに親の成長ポイントです。

当時、ここはとても大事なところだなと思ったことを、よく覚えています。

我が家では、その年のクリスマスにはケーキを買うのをやめました。そして、ケーキを買うささやかなお金を教会に献金することにしたのです。

我が家の近くの教会では、毎年クリスマスにホームレスの人たちの炊き出しをするのです。

今、私たちにできることは何? 娘とふたりで考えた『できること』でした。

そのクリスマスから16年、今年も無洗米とお餅を教会に届けます。靴下をあげるだけでは解決しないのと同じように、一回の炊き出しの少しの足しになるくらいのお米が役に立つのか。

自己満足、罪滅ぼし……そんな言葉が胸をよぎります。自分のこの両手で何ができるのか。クリスマスは、そんなことを考えるときでもあるのです。

※記事中の写真はすべてイメージ


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
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