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『伝えられないまま心の底に沈んだ思い』を、言葉に書き出してみる

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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手紙を書く女性

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

言葉にすると癒される〜漂流郵便局のこと

言葉にするということ。それは、心の中にある言葉にならない気持ちに名前を与えること。

どう表現していいかわからない気持ち、伝えられないまま心の底に沈んだ思い。それをそのままに眠らせておく。目覚めを与えないままやり過ごすこともできるかもしれません。

そんな思いはときどき名前を思い出せない昔の友達のように、ぼんやりと浮かんでくるものです。

何かもやもやとする。その輪郭をなぞるように言葉にしてみる。思いつくままに言葉を書き出してみる。無理に文章にしようとしなくてもいいのです。

ただ、正直であろうという気持ちだけに焦点をあてて、言葉という名前を与えていく。伝えたかった思い。本当のことを言えなかったこと。後悔。悲しみ。

誰も読むことのない言葉です。書いた紙は破って捨ててしまう。そのくらいの気楽さで、言葉にしてみてください。言語化することで、心に科学変化が起きてきます。

ノートにペンで書く女性の手

例えば、とても悲しいことがあったとき。嫌なことがあったとき。その思いの丈を紙に書き出す。殴り書きでも、誰かへの手紙でもいいのです。悲しみへのお別れの手紙です。

そして、最後に感謝の気持ちを書く。どんな出来事であっても、学んだこと、得たものがあります。そのことへの感謝として「ありがとう」と書きます。できたら、10回くらい「ありがとう」と書いてみる。

そして、もしも可能であれば、その紙を燃やしてします。または、細かく千切って捨てる。これは、悲しみやネガティブな気持ちとのお別れ、浄化の『儀式』です。

古い手紙と羽

届け先のわからない手紙、亡くなった人への手紙、未来の自分への手紙などを受け付ける郵便局があります。

漂流郵便局。香川県の粟島にある本物の郵便局を、アーティストの久保田沙耶さんが瀬戸内国際芸術祭に『漂流郵便局』という作品にしました。

これまでに届いたおよそ5万5千通の手紙に消印を押し、アート作品として展示をしています。差出人の名前も住所も書く必要はありません。

行き場のない思いや、伝えられなかった思いを受け止める場所として、今も多くの手紙が届いているそうです。

古い郵便手紙

自分の心でありながら、自分の心をどう扱っていいかわからなくなることがあるものです。

母が亡くなった後、いろいろな思いが心をめぐりました。言い忘れたこと、もっと何かができたのではなかったか。今自分がこうしていられるのは、母の愛があったからだと。

思いをめぐらすことは、喪失感を癒すプロセスでした。その思いを私はいくつかの歌詞に散りばめ、詩を書きました。歌詞や詩が私の思いの行き場所でした。

沈む太陽とボトルに入った手紙

言葉にすると癒されます。そうして自分の心をつきあっていく。書きやすいペンと、インクと馴染みのいい便箋を。

小さな島の郵便局の片隅にも、言葉にならない思いの居場所があるのです。

いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で

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※記事中の写真はすべてイメージ


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
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出典
漂流郵便局

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