動物がいない『ペットショップ』 店がなくなった後、残ったのは…
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
去った後に残るもの
我が家の近所に、毎日上機嫌のおばさまが住んでいました。ペットショップでもないのに、『ペットショップ』と小さな看板を掲げ、通りに面した庭先にたくさんの花の手入れをしながら、通る人に「こんにちは」と声をかけていました。お店でもない、でも普通の家でもなさそうな。
売っているわけではないと思うのですが、時々ウサギがいたり、翌週にはそこにウサギの置物があったり。またはご自分でお描きになったであろう白鳥の油絵などが飾ってあったり…そんなユニークなお家でした。通りに面した庭の一部を解放し、前を通る人を楽しませようというお気持ちだったのかもしれません。
去年の秋の台風のとき、桜の木の枝が折れるほどの強風が吹きました。おばさまの家の物置は倒れ、何列も並んでいた花の鉢もバラバラになってしまいました。いつもにこやかなおばさまが困った顔をしながら片付けをしていたのが、私がおばさまを見かけた最後となりました。それからしばらくして引っ越され、ユニークな『ペットショップ』は解体されました。
建物が解体され更地になってしまうと、そこにどんな建物があったのか思い出せないことがあります。何十年とその前を通っていた店が撤退し、次の店が入ってくる。あら、ここは前、何だったかしら? 自分の記憶力が不安になります。
考えようによっては、覚えている必要がないので思い出せなくなっているのかもしれません。家があったのでわかりませんでしたが、『ペットショップ』の跡は300坪はありそうな広い空き地になりました。
冬が過ぎ、春の兆しが見えてきた頃、その空き地に草が生えはじめました。所々に生えた草は、みるみるうちに空き地全体に広がりました。
そして4月になると紫色の花、オオアラセイトウが咲きはじめ、所々にオレンジ色のナガミヒナゲシが咲き、ぺんぺん草、ナズナが一面に広がりました。
そしてカモミールの白い花もうわあっと広がりました。それらは繁殖力の強い『雑草』とよばれてしまう花々かもしれませんが、その空間だけ夢のように美しいのです。しばらくすると濃いピンクのムシトリナデシコが咲きはじめました。
空き地はますます美しく賑やかな空間になりました。前を通る人は立ち止まり、中には写真を撮る人も見かけます。
人は、自分が去った後に何を残すのでしょうか?
何が残るのでしょうか?
風変わりな『ペットショップ』のおばさまが残したのは、絵本の一ページを開いたような一面の花たちでした。みんなを楽しませたいという思いは、引っ越した後にも残ったのかもしれません。
人は、どこかに足跡を残していくものです。自分が歩いてきた道に、どんな花が咲くのでしょうか。
毎日この道を通るたびに、そんなことを思うのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」