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「昔の歌はよかった」そんな批判は的外れだった…教え子のライブで感じた『今』を生きる力

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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音楽を聴きながら空を見上げる女性の写真

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

私は『今』を生きているか〜メジャー・デビューおめでとう

昨年度まで教鞭をとっていた音楽大学の作詞クラスを受講した学生からメールが届きました。

「バンドのメジャー・デビューが決まりました。ライブを観ていただけたらうれしいです」

60人ほどのクラス、一般教養なのでそれほど学生と関わりを持つことないのですが、中には授業外で作った作品についてのフィードバックを求めてくる学生もいて、バンドのデビューが決まったA君ともそんなやりとりをした記憶があります。

質問をする男性の写真

音楽大学の学生たちの多くは、音楽家として生きていく!という明確な目標を持っています。

それが狭き門だと分かっていても、諦められない。とにかく音楽のそばで生きていたいと願っている。

しかし、本当に音楽だけで身を立てていける人はほんの一握りであるというのが現実です。

でも、若いって本当にすばらしい。まだ何も持っていないことの強さがそこにあります。

3人の大学生の写真

授業ではさまざまな課題を出して、その場で言葉、フレーズを考えてもらいました。

それをGoogleクラスルームに投稿してもらい、その場でフィードバックしていきます。

感心したのは、限られた短い時間の中で、エッジの効いた表現やフレーズが多く返ってきたこと。

作品を考えるというよりも、もしかしたらそのときの思いの丈を言葉にした人もいたのかもしれません。

そこにはこの時代を生きる若い人たちの体温があり、生きづらさを感じさせるもの、社会への焦燥感や自分を信じて突き進む情熱がありました。

前期、後期の考査として歌詞を提出してもらうのですが、多くの学生が力を注いで書いていることが、びしびしと伝わってきました。

本とメガネの写真

私も大学を卒業してから2年間、作詞家になるために毎晩夜中過ぎまで勉強しました。

夢に向かって必死。あの感覚、あの集中力を今はもう味わうことはできない。

自分を信じ、いえ、信じるのだと言い聞かせるようにして生きた時期は濃密でした。

それが、何も持っていない強さなのだと思います。

ライブで手を上げる人の写真

Zepp羽田でのA君のバンドのライブはすごかった。

オーディエンスを一つにする力があっただけでなく、彼が歌う『キミ』が一人ひとりの胸にダイレクトに刺さっていく。

一緒に泣くし、一緒に笑う。私たち世代の作家が書いた歌とは違うアプローチがそこにある。

今の若い人の歌は何を言っているかわからない。みんな同じに聞こえる。昔の歌はよかった…そんな批判は的外れだということに気づきました。

それが価値を決めることではないし、ジャッジしても何も生まれないのですから。

彼らは『今』を生きている、その生命エネルギーを炸裂させているのです。

そして私たち世代も、『今』を生きているエネルギーを炸裂させればいい。

爆音のライブは耳に辛いですが、あのパーソナルでありながらつながる一体感はまさに『今』を感じる時空間でした。

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※記事中の写真はすべてイメージ


[文/吉元由美 構成/grape編集部]

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