「今日という日を精一杯愛し、生きている?」と、改めて自分に問い直してみる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
明日があるとは限らない日々の中で思うこと
明日何をしようか。来週の予定は? 来月は、来年は……。考えてみると、私たちの『今』は、いつも未来のことを念頭におきながら、「ここに」あるように思います。
今ここにいる、という瞬間を刻みながら生きているにもかかわらず、先へ先へと行こうとしているような気がします。
でも、実は次の瞬間生きているかどうかわからない。命の汀を歩いていることを忘れています。「近いうちに会いましょう」と言って別れた友人に、また会える確約などないのです。
生きるとはそんな「すれすれ」のことなのに、果たして自分はこの瞬間を大切にしながら生きているのか。ふと考えてしまうことがありました。
実際に会ったことはありませんでしたが、エンタテイメント業界のある人とFacebookでつながりました。何回かコメントのやり取りもありました。
1年ほど前だったか、その人に癌が見つかり治療を始めたという投稿がありました。
手術をした。治療を始めた。食欲が戻ってきた。来年になったら新しいプロジェクトを始める予定です……と、その時々の近況、心情を発信していました。
お見舞いに訪れた仕事仲間、友達との写真の中に、日毎その人が痩せて衰えていく姿がありました。そして「まだまだ生きます」という投稿をした翌朝、その人は旅立ちました。
これは映画でもTVドラマでもない。一人の人間が命を全うするまでのつぶやきです。それをSNSを介して赤の他人が共有する。なんとも不思議な感じがします。
何人もの同世代の友人が旅立ち、誕生日になると「今日がお誕生日です」とお知らせがくる。そのフィードの主がいなくなっても、まだそこにいるかのように。
そのたびに、ああ、もういないんだなあと胸の奥に風が渦巻くのです。
No day but today.
「未来も過去もない。今日という日を精一杯愛し、生きるだけ」
これはブロードウェイ・ミュージカル『RENT』の大きなテーマです。貧しさ、HIV、LGBT……さまざまな問題を抱えた若者たちが、絶望の中に希望を見出しながら愛でつながっていく姿を描いたミュージカルです。
『RENT』を観るたびに、心を揺さぶられます。「今日という日を精一杯愛し、生きるだけ」本当に自分はこのように生きている?と、会ったことのないFacebookの『友達』の旅立ちに、改めて問い直します。
今ここにいることは奇跡であり、生きていくとは、その奇跡を命の汀で躍動させること。『友達』が、教えてくれました。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」