4年ぶりのニューヨーク滞在 まず、地下鉄に慣れることから始める
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
ニューヨーク、旅は地下鉄に乗ることから
移動の多い旅よりも、滞在する旅が好きです。街を歩き回り、旅の中に『日常』を感じたい。
一人旅をしていた20代、30代の頃は、よく冬のパリに(飛行機代が安かった)2週間ほど滞在し、心細さを感じながら歩き回ったものでした。
その街の空気をよりディープに味わうためには、まず「街に慣れる」ことから始めます。慣れるには、とにかく地図を頭に入れ、歩き回ること。人の歩くリズム。雑踏の空気感。
パリなら、そっけなくされることにも免疫を高めていくこと。そして地下鉄やバスなど公共交通機関を乗りこなせるようになると、その街に慣れてきた自分を感じます。
地下鉄やバスに乗ると言っても、日本のように治安がいいとは限りません。パリのメトロにはスリが多いし、ニューヨークもコロナ禍以降、治安が再び悪くなっていると聞きます。特に地下鉄は気をつけるように。路線やエリア、乗る時間帯を考えます。
この夏、4年ぶりにニューヨークに2週間滞在しました。街を歩く勘、リズム感を思い出さなくてはなりません。
まず、地下鉄に慣れることから。緊張し、警戒心を張り巡らせると、何もかもが怪しく見えてきます。着いた翌日に乗った車両の乗客全員が怪しく見えてしまい(確かに怪しかったのですが)、わずか数駅でもぐったりです。
ホームレスが増えたこと、そしてドラッグによって挙動不審な人も増えたことが、地下鉄の治安の悪化につながっているそうです。
緊張感を持つことは大切なのですが、持ちすぎても疲れます。ホームでは中央に立つこと。家族づれや、ビジネスマンなどの近くにいること。
車両に怪しい人がいないか、瞬時にチェックすること。そしてもちろんバッグは抱える。スマホなどは見ない。盗まれることもあるし、周りに注意が向かなくなります。
そんなことに気をつけて地下鉄を利用しているうちに、ニューヨークに慣れていく。スニーカーを履いて歩き回りながら、街に慣れていくのです。
メトロポリタン美術館へ行くのにダウンタウンから地下鉄に乗りました。しばらくすると、大きな声で黒人男性が演説を始めました。
怒りをぶつけているようなトーンなので、よく聞くとラップのようなのですが、乗り合わせた乗客の誰もが男性に目をやることなく無視している。私の隣にいた赤ちゃんは満面の笑顔でノリノリ。
次の駅でその男性が降りると、替わってフォルクローレ隊が乗ってくる。哀愁のある歌が車内に響く。彼らは次の駅で帽子を差し出しながら降りて行きました。
タイムズスクエア近くの駅のホームには、パンツ一枚のおじさんが立っていました。
こんなカオスがこの街のあちらこちらにあります。帰りのバスでは、乗客と運転手が怒鳴り合いの喧嘩が始まりました。停留所に停まったまま、運転手はエンジンも切ってしまう。
窓の外では、のんびりと犬の散歩をしている人たちが行き交う。その街に慣れていくとは、その街の空気感、リズムを感じながら、自分のペースを崩さない、ということもあるのかもしれません。
一人の乗客が怒鳴りながら降りていくと、バスはやっと動き出しました。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」