この世に生み出されるものには、携わった人たちの心がこもっている
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
ものには作った人の心がこもっている
先日、イベントで使う花を買いに、早朝に花市場へ行きました。今年の花の出来はどうかと市場の人に聞いてみると、やはり夏の高温と雨が降らなかったため例年に比べて低調だそうです。
それでも市場は色とりどりの秋色の花々で埋め尽くされていました。いろいろな形のハロウィン用のカボチャも、季節の賑わいを見せています。
市場ですから10本単位での販売、花屋さんの何分の一の値段です。それはありがたいことなのですが、生産者の方々を思うとちょっと考えてしまいました。
日頃、花の値段は高いなあと思っていましたが、一輪の花が私の手元に来るまでにどれだけの人の思いがこめられているかと思うと一層花を愛しく思うようになりました。
「ものには作った人の心が宿っているのよ」
娘が4歳くらいの頃、そんな話をしたことがあります。
「お家には、大工さんの『このお家で幸せに暮らしてください』という心が、野菜には農家さんの『これを食べて元気で頑張ってください』という心がこもっているのよ」
すると、娘はテーブルの上に転がっていたどんぐりを手のひらにのせてこう言いました。
「種には、神様の心がこもっているんだね」
そうだ。そうだった。少し大袈裟に言うと、この言葉は宇宙の秘密を語っているのでした。ものに作った人の心がこもっているのであれば、私たちにも神様の心がこもっているはず。
米津玄師の『地球儀』という歌の冒頭には、このような誰もが産まれるときに「行っておいで」と神様に背中を押されて生まれてくるのかもしれない。我が子を送り出すような思いかもしれません。
私たちの命には、遠い昔に私たちの命を作った人の心がこもっていて、同時に両親の心も宿っているのだと思います。
このように考えてみると、いま手にしているものへの見方が変わります。
この世に生み出されるものには、携わった人たちの心がこもっている。そう思うと、ありがたい気持ちでいっぱいになります。
日常の生活の中で、思わず手を合わせたくなるような瞬間があります。一人ひとりがその瞬間を感じ、大切にできたなら…世界はまろやかになるかもしれません。
「ものには作った人の心がこもっている」
秋の花々で埋め尽くされた市場には、生産者の方々の思いも満ちていたのでした。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」