春の香りは 沈丁花から… アナウンサー押阪忍の『美しいことば』
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こんにちは、フリーアナウンサーの元祖!?などと言われている押阪忍です。
ご縁を頂きまして、この欄で、お喋りをさせていただくことになりました。お目に留まれば、シニアアナウンサー(花ウンサー)の『独り言』にお付き合いいただければ幸いです。
春の陽光が柔らかく穏やかに、でも時には眩しく感じられるようになりました。梅が咲き、桃が咲き、まもなく桜花の春を迎えます。
先日、ご町内を散策しておりましたら、なんとも言えぬ馥郁とした香りが、漂ってまいりました。10メートルほどの先のお宅の庭の梢に、枝垂れ桃がありましたので、その匂いかな…と思いましたが、そのお宅に近づくにつれ、匂いの強さが桃とは違います。
足を止めてじっと見ると…判りました。沈丁花です。生け垣に1メートルほどの高さで、一杯の花をつけています。光沢のある丸みを帯びた葉に囲まれて、外側は赤紫、内側は白の四弁の小花が、はじけるように咲いています。
頭上の枝垂れ桃の華やかさはありませんが、この花の香気が、足元からしっかり春の到来を告げてくれています。香木の沈香と香料(スパイス)の丁字に似ているので、「沈丁花」と名付けられたそうですが、高校生の頃、沈丁花と発音して、先生から笑われたことを、いまだに覚えています。
この花の匂いに、ふと足を止めた方も多いのではないでしょうか。1mほどのドーム形の枝ぶりに、可愛らしい小花を一杯つける沈丁花。実はかつて我が家にもありましたが、植え替えをしましたら、残念…枯れてしまいました。移植を嫌う花木だそうです。
この花も、都市開発やマンションブームで、だんだん見られなくなりましたが、それでも公園や古いお宅の庭先などでは、この時季、その香ぐわしい匂いが、漂っているのではないでしょうか。
春の匂いは『沈丁花』、秋の知らせは『金木犀』。目で見えなくても「香り」で季節を感じられる日本の四季。ホントに素晴らしい国だと思いますねぇ…。
沈丁花 咲きあふれおり 町の春 忍
<2017年3月>
フリーアナウンサー 押阪 忍
1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。1965年には民放テレビ初のフリーアナウンサーとなる。以降テレビやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典なども行う。2016年現在、アナウンサー生活58年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。