失敗を「笑って話せる」メンタリティは救いになる 苦労話は、成長していく花道に
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
失敗は武勇伝に、苦労は花道に
私はこれまで、数々の失敗、間抜けなことをやらかしてきました。注意力散漫なのか、詰めが甘いのか。
中学生のとき。体育の授業でソフトボールをしたのですが、友達がホームランを打ったバットが飛んできて額を直撃。
痛い!とうずくまり、やっと立ち上がったときにはアニメの『もーれつア太郎』に出てくるデコッパチみたいなコブがなり、笑えない状況なのに笑ってしまうという……。
健康サンダルを履いて、転んで前歯を折ってしまう。久しぶりにハイヒールを履いて食事に向かう途中で転び、手首を骨折。救急車で運ばれ、入院するとか。
朝、カミソリで指を切ってしまい、とりあえず止血しそのままゴルフに行き、グローブが血だらけになってしまったとか。鼻血が止まらなくなり病院に行けば、なぜか老人内科に回されるという……。
どれも笑えない怪我なのですが、なぜか悲劇にはならない。バットが当たればデコッパチになり、健康サンダル履いて転び、折れたのは前歯。
ひょうきんとしか言いようがない。おしゃれをすれば転ぶ。そして病院のカルテには「痛がり」と日本語で書かれてしまう。なぜかオチがついてしまう。やれやれです。
そして、こんな怪我の話を人にするとき、決して話を盛っているわけではないのですが、武勇伝のように話し、笑ってもらって満足する自分がいるのです。
もちろん、大事に至らなかったので笑って話せるのですが、失敗を「笑って話せる」メンタリティは救いになります。笑って話してしまうことで、癒されます。
武勇伝のように話し、オチをつける。すると、みんな笑ってくれる。武勇伝にように話すのは、困難を乗り越える一つの『コツ』なのです。
これは、自分の滑稽さを笑えるかどうか、ということにつながっています。失敗をして自分を責め、誰かを責め、嘆くのか。
シリアスな状況の中で、自分の滑稽さを見出せるか。苦労話を、成長していく花道にできるか。
人生はひと色ではなく、また何も起こらない人生なんてありません。口に出したくないことも経験するし、心の底に澱のように沈んでいる出来事もあります。
でも、それは知らず知らずのうちに生きづらさにつながり、心の重さになっていくこともあるのです。
人に話さなくても、言葉にしなくても、自分の中で武勇伝にし、花道と思って歩んでいく。重い荷物を持って歩いていくのは大変です。
失敗や苦労を荷物にしてしまうと、いつかその重さに耐えられなくなるかもしれません。武勇伝も花道も、手放すためのきっかけです。
もう怪我はしたくありませんが、この先もきっとあちらにぶつかり、こちらで躓きながら生きていくのでしょう。
それはイバラの道かもしれませんが、イバラの道こそ花道だと思って生きていこうと思うのです……足元に十分注意しながら。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」