「相変わらずですね」と言われたら、どんな感じがする？ 誤解を生まないためにも気をつけたい言葉 By - 吉元 由美 公開：2024-04-07 更新：2024-04-07 エッセイ吉元由美連載 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 「相変わらず」の難しさ あるお祝いの会の案内状が届きました。その日、仕事関係の打ち合わせがあり参加できない旨をメールで幹事に伝えたところ、このような返信がありました。 「残念です。相変わらず忙しいのですね」 他意はないと思うのです。ただ、小さな魚の骨が喉に刺さってしまったような違和感が、「相変わらず」という言葉にありました。 「相変わらず…今までと変わったようすが見られないさま。以前と同じように」（小学館『デジタル大辞泉』より） 返信の文言も「以前と同じように忙しいのですね」ということです。ここで考えたいのは、どういうシチュエーションで「相変わらず」という言葉が使われるのかということです。 「相変わらず」とは、「変わらない」ということを強調する言葉です。使い方、使うタイミングによっては、嫌味に聞こえてしまうことがあります。 「相変わらずですね」 と言われたら、どんな感じがするか。「以前のまま進歩していない」というニュアンスが含まれているような気がしてしまいます。 もちろん、文脈にもよりますし、会話の中であれば声のトーンによって受ける印象は変わってくるでしょう。 「伝えたい」ことを「どう伝えるか」。「どんな言葉」で、「どう伝えるか」。一つの言葉にいくつかの意味を含む言葉があります。 例えば「悲しい」という言葉には、「心が痛んで泣けてくるような気持ち」「愛しい」という意味があります（「愛しい」という意味での使われ方は、古典の文献に多く見られます）。 一つの言葉に相反する意味が含まれる。日本語の奥深さに通じます。 また、一つの意味にいくつもの『表現』『言葉』がある言葉もあります。使い分けがなかなか難しいかもしれませんが、それだけ自分の『気持ち』『趣旨』を表現できる言葉でもあるのです。 例えば感謝を伝える言葉として「ありがとうございます」「感謝します」「御礼申し上げます」という言い方があります。 それだけ、自分の気持ちの温度や手触り、人との関係を表すことができるということなのです。 「相変わらず」という言葉には、自分のことを言う場合、謙遜の意味もあります。自分のことを「相変わらず○○しています」という言い方は、謙遜の姿勢、時には自虐的なニュアンスを表します。 言葉の持つ温度や手触りが、その意味と共に『ニュアンス』として伝わります。いくつかの意味を含む言葉を他者に対して言う場合、少し気をつけたいところです。 誤解を生まないためにも、そして言葉を豊かに伝えられるように、多くの言葉に触れることが大切だと思います。 いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で吉元 由美1,584円(04/30 04:00時点)Amazon楽天市場YahooAmazonの情報を掲載しています ※記事中の写真はすべてイメージ 作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー [文・構成／吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
「相変わらず」の難しさ
あるお祝いの会の案内状が届きました。その日、仕事関係の打ち合わせがあり参加できない旨をメールで幹事に伝えたところ、このような返信がありました。
「残念です。相変わらず忙しいのですね」
他意はないと思うのです。ただ、小さな魚の骨が喉に刺さってしまったような違和感が、「相変わらず」という言葉にありました。
「相変わらず…今までと変わったようすが見られないさま。以前と同じように」（小学館『デジタル大辞泉』より）
返信の文言も「以前と同じように忙しいのですね」ということです。ここで考えたいのは、どういうシチュエーションで「相変わらず」という言葉が使われるのかということです。
「相変わらず」とは、「変わらない」ということを強調する言葉です。使い方、使うタイミングによっては、嫌味に聞こえてしまうことがあります。
「相変わらずですね」
と言われたら、どんな感じがするか。「以前のまま進歩していない」というニュアンスが含まれているような気がしてしまいます。
もちろん、文脈にもよりますし、会話の中であれば声のトーンによって受ける印象は変わってくるでしょう。
「伝えたい」ことを「どう伝えるか」。「どんな言葉」で、「どう伝えるか」。一つの言葉にいくつかの意味を含む言葉があります。
例えば「悲しい」という言葉には、「心が痛んで泣けてくるような気持ち」「愛しい」という意味があります（「愛しい」という意味での使われ方は、古典の文献に多く見られます）。
一つの言葉に相反する意味が含まれる。日本語の奥深さに通じます。
また、一つの意味にいくつもの『表現』『言葉』がある言葉もあります。使い分けがなかなか難しいかもしれませんが、それだけ自分の『気持ち』『趣旨』を表現できる言葉でもあるのです。
例えば感謝を伝える言葉として「ありがとうございます」「感謝します」「御礼申し上げます」という言い方があります。
それだけ、自分の気持ちの温度や手触り、人との関係を表すことができるということなのです。
「相変わらず」という言葉には、自分のことを言う場合、謙遜の意味もあります。自分のことを「相変わらず○○しています」という言い方は、謙遜の姿勢、時には自虐的なニュアンスを表します。
言葉の持つ温度や手触りが、その意味と共に『ニュアンス』として伝わります。いくつかの意味を含む言葉を他者に対して言う場合、少し気をつけたいところです。
誤解を生まないためにも、そして言葉を豊かに伝えられるように、多くの言葉に触れることが大切だと思います。
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成／吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」