Jupiter作詞家、吉元さんへ4つの質問「降りてくるんですか?」「え?誰が?」
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
作詞家への4つの質問
作詞家は隠花植物のようなもの。日陰の身という意味でも、縁の下の力持ちという意味でもありません。確かに日陰、縁の下ですが、しっかりと根を張って広がっていく。人の目に付かないところで、歌詞を書く。試したことはないですが、私が歌詞を書く時には受験生のように机に向かい、人に見られたものではない感じで書いているので、日陰、縁の下というのがしっくりくるのです。
作詞について、よく聞かれる質問が4つあります。
「詞と曲とどちらが先なのですか?」
どちらもありますが、いまは90パーセントくらいは曲が先だと思います。
「自由に書けないから、曲が先だと書きづらくないですか?」
一歩踏み込んだ質問です。曲が先でも書きづらくありません。すでに曲想に物語があります。バラードならバラード、アップテンポならそれに合った世界観があります。そもそも歌詞は自由ではないのです。メロディという『枠』に収めなければなりません。
次によくあるのが、
「体験を書くのですか?」
という質問です。
皆さん、ちょっとにやっとしながら質問します。好奇な目で覗き見されるようで嫌なのですが、歌というのはそれだけ心にストレートに響くものなのでしょう。体験が種やヒントになることはあっても、そのものを書くことはまずありえない。フィクションにいかにリアリティを持たせるかというところが、作詞家の技量の1つなのです。
吉元さん愛用のペン
そして、この質問もよく受けます。
「海を見ながら歌詞を書くのですか?」
海を見ながら書いたことはないし、書けないと思います。気持ちよくてぼーっとしてしまうので。自分を追い込んでいくのには、目の前が壁であることが望ましいのです。
最後に、これも定番の質問です。
「降りてくるのですか?」
え?誰が?と聞き返しそうになります。特に『Jupiter』を書いた時には、多くの人から聞かれましたし、15年経ったいまも聞かれます。
おそらく、あの歌の世界観がそう思わせたのかもしれません。また、「降りてくる」という不思議な、神秘な設定に思いを馳せるのも分かります。「この歌は天の啓示なの」という物語は、やはりわくわくするようなありがたさがあります。
歌の神様が降りてきたのだろうかと思わざるを得ない大先輩たちの歌詞を読むたびに、そこにどれだけの想像力と集中力があったのかと思います。「降りて来たのですか?」という質問をされるような作品を書く。これまでやれやれな質問と思っていましたが、目指すべきはこのような高嶺なのかもしれません。
ひとり仕事部屋にこもって、日々研鑽です。
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」