「持っていたい」「まだ使えるかも」終活で起こる心のせめぎ合いとどう向き合う?
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
終活の約束
物事、最後の締めくくりが大切です。仕事でも詰めが甘いとうまくいきません。人生も同じ。この先の年月に無計画ではいられない年代になりました。『終活』と聞くと、自分にはまだ早い、縁起でもないという思いがあったのですが、それは延命や葬儀やお墓、相続などを記したエンディングノートに紐付けされてしまうからでした。人間、いつ何があってもおかしくないのですから、こうしたいという意志があるならきちんと明記しておくことが、残された人に負担をかけないことになります。エンディングノートも含め、終活とは『これからの生き方』だと、夏に体調を壊して入院したときに実感しました。そしてそれは決して縁起の悪いことでも、考えたくないことを考えることでもなく、『いま、ここ』を生きることそのものだと思ったのです。
自分にとって、最も心地のいい状態にする。自分の終活を考えたとき、まず最初に思いついたことです。そのために、必要なもの必要でないものを手放す。大切なもの、もう大切ではないものもあるでしょう。目に見えるもの、見えないものをどんどん手放していく。片付けが心に与える素晴らしい影響について、多くの人が提唱しています。心と身を置く場所にスペースを作る。それは、シンプルに暮らすという心地よさだけでなく、そこに豊かさを見出していくことでもあります。
もう24年ほど前のことになりますが、ある日突然思い立ち、山のようにあった洋服、CD、本を処分したことがありました。そのことを当時仕事していた編集者に話したところ、
「吉元さん、結婚するかもしれませんね」
と言われました。彼がどのような考えでそう言ったかわかりませんが、過去を一気に精算し、新しい何かを受け入れる準備をしたということなのでしょうか。その通りになったところをみると、大片付けというのは新しい展開の兆しなのかもしれません。
溜め込んでいるもの。私の場合、書類、本、CD、洋服、小物…大変な量になります。整理整頓が下手ということもありますが、溜め込んだものは執着でもあるのです。「持っていたい」「まだ使えるかもしれない」という思いを執着だと自覚できると、手放す作業が自分の心とのせめぎ合いになる。このせめぎ合いが、生きる力を鍛えるのではないかと、少し大げさに考えてもみるのです。
心も空間もシンプルになれば、本当に好きなもの、大切なものを楽しむことができます。自分にとって価値のあるものは、形のあるなしにかかわらず豊かさをもたらしてくれる。その豊かさを享受していくことが、終活の真髄なのではないかと思います。
『楽しむ』これがテーマです。どんなことも楽しむ覚悟をする。健康的なことも、経済的なこともあります。つらいと思えば、どんなこともつらくなる。でも、小さなことにも幸せを感じる感性と、楽しみを見出す想像力と創造力も自分の内側から生みだすことができる。神様と約束してきた時間を喜んで、楽しんで過ごす。これが私の終活の約束です。
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」