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季節には音がある 10月は「かさこそ」、では11月は? 押阪忍の『美しいことば』

By - 押阪 忍  公開:  更新:

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こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。

ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独り言』にお付き合いください。

コートを羽織り衿を立てる季節になりました。枯葉が舞い落ち風に吹かれると「かさこそ」と音をたてて往き去ります。絵にも音にもなる晩秋の佇まいです。

ところで詩人の那珂太郎さんの『音の歳時記』によると、10月の音が「かさこそ」で、11月は「さくさく」とありました。当方は11月の木枯しで、枯葉が道端に吹き溜り、それが、また風を受けると「かさこそ」と音を立てて移動したり、人が落葉の上を歩くと「かさこそ」と音をたてるので、11月が「かさこそ」だと思っていました。

音に鋭敏で繊細な詩人の感覚は、凡人より1か月早く四季の移ろいを『音』で聴きとるのでしょうね。11月の「さくさく」は、落ち葉と霜の朝の音だそうです。

そして12月は「しんしん」、晩秋の山は紅葉で彩られ、山粧うやまよそおうという表現もありますが、その錦秋の山が、今度は雪を頂き「しんしん」と静まりかえっているさまをいうのでしょうね。

1月、寒さが尚厳しくなると「しいん」。2月は氷の張る音か「ぴしり」3月は雪解けの川の音が「たふたふ」、4月は桜か蝶か、「ひらひら」など、音で表現した季節の移ろいが見事に、平仮名で表現されています。

SNS社会になり、スマホも、電話として話すより、映像や文字を拾うようになると、これまで日本人が大切にして来た、豊かで柔かくて繊細なことばが、知らず知らず失われて来ているように思うのです。

咲く花たちで季節の変化は分かりますが、吹く風や鳥や虫などの鳴き声からも、季節の移ろいが感じられるように思うのですが…。

いかがでしょう、多忙な日常生活ですが、どこかで、そんな自然との「音の対話」を楽しんでみたいゆとりが欲しいものですね。

<2017年11月>

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フリーアナウンサー 押阪 忍

1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。1965年には民放テレビ初のフリーアナウンサーとなる。以降テレビやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典なども行う。2017年現在、アナウンサー生活59年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。

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