先生「あの頃と同じ顔してるな」再会は時を超え、守られて育ったありがたさを思い出させてくれる
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トレーナーに「何かスポーツしてたんですか?」といわれて頑張れる!素直に『褒め』を受け取ることの大切さ吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会っ...

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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
学生時代、懐かしくせつなく
電車の中でのこと。グレイヘアのおばさまの隣が空いていたので座りました。
そのときなんとなく私と同じ目的地へ向かっているのではないかと思ったのです。
その日、母校で行われる、指揮者であり卒業生の小澤征爾さんを記念するコンサートがあり、そこへ向かう道中のことでした。
トートバッグからちらりとフライヤーが見え、またおばさまの雰囲気がなんとなく良き時代の母校で学んだ卒業生の雰囲気があったのです。
するとおばさまは、斜め前の席に座っていた人に、
「あら、さち子さん?」
と声をかけました。さち子さんと呼ばれたおばさまは首を傾げながらこちらにやって来て、
「もしかして、さと子さん? まあ、さと子さん、何年振りでしょう?」
「すぐにさち子さんってわかったわ」
「こんなにおばあさんになってしまったわ」
と、二人は再会を喜び合っていました。
そして私と同じ駅で降り、コンサートが行われる学園の講堂へ向かわれたと思います。
とても微笑ましい光景でした。卒業して、それぞれにまったく違う人生を歩んでいたとしても、再会すると時を超えてしまう。
それが心を寄せた友達であればあるほど、懐かしさと、遠くなってしまった日々への愛しさとせつなさが胸にあふれる。
偶然隣り合わせたおばさまたちの光景に、守られた環境の中で無防備でいられた学生時代を思い出し、懐かしく、そして少しせつない気持ちになったのでした。
とは言え、同窓会が楽しみかというと、それはまた別の話になります。
大勢で昔の話ばかりになるのは少し残念。卒業してからのこと、これからのことを分かち合ってみたい。
そんな話ができる会になればいいなあと思います。
思い出話は、いつか尽きてしまう。
すると、なんとなくもう同窓会に行かなくてもいいかなという気持ちにもなるのです。
母校でのコンサートでは、何人かの同級生や後輩たちと久しぶりに会いました。
とても懐かしく、会えてよかった。30年、40年振りですから。
初等科時代の恩師にも会えました。先生はじーっと私の顔を見て、
「吉元、初等科のときと同じ顔してるな」
と。こんな先生の一言は、半世紀以上前のあの頃、守られて育ったことへのありがたさを思い出させてくれたのでした。
瞬く間に時は過ぎていきます。
歳を重ねて変わっていくことがあっても、自分の中に変わることのないフレッシュな感性を大切にしたい。
それが、懐かしいと友人たちと再会する時の心地よさにつながるのではないかと思うのです。
きっとそんな人とのつながりが人生に彩りとなっていくのでしょう。
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※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美 構成/grape編集部]