trend

暴れる酔っ払いをパトカーで連行 車内の珍事件に「笑うの我慢した」「地獄の時間」

By - りょうせい  公開:  更新:

Share Post LINE はてな コメント

警察官の写真

※写真はイメージ

かつて警察官として勤務していた筆者。当時は、年齢も性格もまったく違う『相棒たち』と、数々の現場を一緒に乗り越えてきました。

厳しい職務の中でも、思わず笑ってしまうような瞬間があるのが、この仕事の面白いところの1つです。

本記事では、警察官時代に筆者が出会った『ちょっと変わった先輩』を紹介します。

兄貴肌で天然な先輩

その先輩は、柔道の猛者として知られる人でした。警察署対抗の武道大会では無類の強さを誇り、署内でも一目置かれる存在。

警察には、悩みを打ち明けやすくするための『兄弟制度』のような仕組みがあり、筆者にとってその先輩は直属の『兄』でした。

「警察の中では俺はお前の兄ちゃんだからな!」

そう何度も言っては、誇らしげに『兄ちゃんアピール』をしてくる姿が印象的でした。

面倒見もよく、後輩たちの相談にもよくのってくれる人ですが、強さと優しさとは裏腹に、どこか天然な一面も。

強くて頼りになるけれど、ちょっと変わった先輩の『天然な一面』を象徴する出来事が起きたのです。

酔っ払い搬送中に響いた、先輩の大声

とある週末の深夜、繁華街で「泥酔した男性が暴れている」と通報が入りました。

現場に到着すると、男性は腕を振り回して大声を上げ、手がつけられない状態…。

やむを得ず保護し、パトカーで警察署へ搬送することになりました。

繁華街とパトカーの写真

※写真はイメージ

運転席と助手席に1人ずつ、後部座席には警察官2人と泥酔者を挟む形で、計5人での乗車。

狭い車内でも、男性はなお暴れ続け、「国家の犬が!」などと悪態をつく始末です。

泥酔者の隣に座っていた筆者は、怒りをぐっとこらえながら必死になだめていました。

すると突然、助手席の先輩が車内がビリビリと震えるほどの声で、後ろを振り返りながら、こう怒鳴ったのです。

「ご主人さんっ!!」

周囲に座っていた警察官に緊張感が走ります。泥酔者も「な、なんだよ…」と尻込みしはじめました。

車内を包む地獄の沈黙

先輩の次の言葉を、筆者も、周りの警察官、そして泥酔者も待っている様子。車内には、ピンと張り詰めた空気が流れていました。

そして、ついに先輩が動き出したと思いきや…なんと、何も言わずにゆっくりと前を向いてしまったのです…!

すかさず運転していた上司が、「…何も言わないんだ」とポツリ。

泥酔者を見ると拍子抜けしたように、ポカンとした表情を浮かべています。先輩の迫力に圧倒されたのかもしれませんが、「え?それだけ?」と言いたそうにも見えました。

泥酔者を挟んで座っていた同僚と目が合った瞬間、笑いがこみ上げ、2人して必死に下唇を噛みしめる事態に…。

意味の分からない地獄のような沈黙。警察署に着くまでの時間が、あれほど長く感じたことはありませんでした。

車と警察官の写真

※写真はイメージ

笑いの裏にあった『優しさ』

警察署に到着し、手続きが終わった後、筆者は先輩に「さっき、何を言おうとしたんですか?」と尋ねました。

すると先輩は、少し照れくさそうに笑いながらこう答えます。

お前らは優しくなだめていたけれど、あんな悪態つく酔っ払いには「喝を入れるのがいい」と思ったんだよ。

でも、勢いで大声を上げたものの、その後何を言うかまでは考えてなかったから、内心は「どうしよう…」と動揺していた。結果的には酔っ払いも黙ったし、いいだろう?

それを聞いた周りの警察官たちは大笑い。先輩は顔を赤らめて、少し恥ずかしそうにしていました。

けれど筆者は、その瞬間に気づいたのです。

先輩は『ただの天然』からの行動ではなく、後輩や市民を本気で守ろうとする気持ちから、とっさに動いてくれたのだと。

まさに強さと優しさをあわせ持つ『兄貴のような先輩』を象徴する出来事でした。

あの日の「ご主人さん!」という力強いひと言は、今でも心に残っています。

りょうせいさんの顔写真

記事執筆 りょうせい

元警察官。警察歴10年。
交番勤務を経て、生活安全課の捜査員として勤務。
行方不明やDVなどの「人身関連事案」を対応しつつ、防犯の広報・企画業務を兼務。
現在は警察の経験を生かし、Xや音声配信(StandFM)にて、防犯情報を発信中。
X


[文・構成/りょうせい]

警察官の写真

警察と企業、どっちがやりがいがある? 両方で働いた元警察官の『本音』とは…警察官として10年間勤めたことがある筆者。現在は退職し、一般企業で働いています。 どちらの世界にも身を置いてみて感じたのは、常識や文化がまったく違うということ。 時にカルチャーショックを受けることもありますが、どちらにも...

夜の公園の写真

深夜徘徊する少年 補導のため警察官が追いかけようとしたら…?【実話】深夜の街は、昼間とは違う静けさがあり、ガラリと雰囲気が変わります。もちろん地域差はありますが、夜間は犯罪の温床になることも…。 公園やコンビニエンスストアの前などで、たむろしている若者がいると「ちょっと怖いな」と感じる人...

Share Post LINE はてな コメント

page
top